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31.休日明けのとある一日(1)
「よっ! 柚月、おはようさん」
有給休暇明けの早朝。
いつもより早めに出社した俺に、同僚の佐藤が元気よく声をかけてきた。
「おはよう。調子良さそうだな」
「そりゃあもう。お前がおらんかった間、割といい結果が残せたさけぇの」
「ほー。そりゃ将来の嫁さん候補が見つかったって意味でか?」
「あぁ、あれの事かいな。そっちはてんでサッパリやったで。やっぱ若い子狙いすぎたのがアカンかったんかなぁ」
「若い子? 女子高生とか?」
「んなアホな、夜の街やぞ。そんなとこにおる女子高生引っ掛けとったら、オレ、こんななってまうやないかい」
佐藤は呆れ顔でそう言いながら、両手を前に突き出し、手錠をはめられるジェスチャーを見せる。
社会人と女子高生の恋愛ってそんなにダメかなぁ?
普段から、十歳のショタっ娘に求婚され続けているもんだから、俺の感覚が麻痺しているだけなのかも知れないが。
「オレが声掛けたんは新卒の子とかや。さすがに、入社間もない子らはまだまだ仕事に熱心やからか、取り合ってもくれんかったわな」
「じゃあ、もうちょい年上の人に行けば?」
「今度はそうするわ。ほんで、お前の方はどないやったんや。リゾラバは見つかったんか?」
リゾラバは三十年くらい前に流行った言葉なので、今や滅多に使われないのだが、要するに、リゾート地におけるラバーの事。
ラバーは天然ゴムとか、そういう意味ではなく、恋人のLOVERから来ている。
つまり佐藤は、リゾートホテルに二泊した間、一時 の恋人が見つかったのかと聞いているのだ。
「そんなの見つかるわけないじゃん。佐藤、俺の性格知ってるだろ」
「カァーッ! お前がそこまで奥手やとは思わなんだわ。あーもったいない」
「そうは言うけど、リゾラバなんて結局幻想みたいなもんだし」
「んな事あらへん。ああいう場所では解放的になった子が多いから、意外といけるもんなんやで」
「そりゃ普通の海とかの場合じゃないの? 俺たちが行ったのは格調高いリゾートホテルだから、客は家族連れとか老夫婦ばっかりだったぞ」
「そうなんか。ほな、女一人の傷心旅行とかは?」
「ないない。あそこ、一人で泊まる部屋を提供するような場所じゃないし」
俺はきっぱり否定した後、カバンから一つのフォトフレームを取り出し、佐藤に手渡した。
「お、これはオーシャンビューの写真か」
「そう。俺たちが泊まってた部屋だよ。あまりにもいい景色だからさ、佐藤へのみやげにしようと思って撮ってきたんだ」
「さよか。そら、おおきに」
「部屋も広いし、豪華だし、すごく快適だったぞ。そんなとこにお一人様でお泊まりだなんて、ハイシーズンでも採算取れないって」
「言われてみりゃそうやな。ほんなら、観光名所でネーチャン引っ掛けたりとかは?」
「んー。初日は名所めぐりと魚釣りだけで精一杯だったからなぁ」
「じゃあ、夜のホテルのラウンジでネーチャンとの出会いも無しか」
「はぁ。お前の頭の中、そればっかりだな」
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