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31.休日明けのとある一日(2)
先に話題を振ったのは俺なんだけど、佐藤があまりにもしつこく女の事ばかり聞いてくるので、今度は俺が呆れてしまった。
もっとも、こいつの女の子に対する執着心の強さは、今に始まった話ではない。
仕事がオフの時の佐藤は、口を開けばとにかく、やれあそこのガールズバーはネーチャンがイケてるとか、今度付き合うならこんな女がいいとか、そんな話が九割を占めるのである。
「だいたい、俺にはかわいいミオがいるんだから、あの子を放ったらかしにしてナンパなんてできないよ」
「せや、ミオちゃんがおったんやったな。あの子、喜んでくれたか?」
「そりゃあもう、おかげさまで。何しろ、あの子は海で泳ぐのも初めての経験だったからな」
「何やて!? 海が初めて?」
海の話をした途端、佐藤が驚いた様子で聞き返してきた。
「そうだよ。ミオはこれまで、そういう環境で育ってきたらしいんだ。だからすごく喜んでたし、楽しんでくれたよ」
「せやったんか……ほな、オレの失恋も、少しは役に立てたっちゅう事かな」
「大いにね。で、そのミオからも佐藤へのお礼って事で、売店で買ってきたおみやげがあるんだ」
「え? ミオちゃんから?」
今度はみやげ物がたくさん詰まった紙袋に手を突っ込み、一つの人形を取り出す。
「はいこれ。手のひらサイズの人形だよ」
「ん? これ何やろ。緑色のレモン?」
「それは佐貴沖島 の特産品、かぼすのマスコットキャラなんだってさ。名前はカボカボちゃんって言うらしい」
「ほー。ご当地のゆるキャラみたいなもんか?」
「たぶんね。ホテルの予約が取れたのをミオに説明する時、佐藤が仕事で行けなくなったって話にしておいたから、お礼という意味でそれを選んで買ってきたんだ」
「そうやったんか。ミオちゃんは優しい子やなぁ」
「だろ?」
「優しくて器量よし、そして極めつけにはかわいいと来とる。完璧な子やないか」
我が子をベタ褒めされると、里親の立場である俺も鼻が高い。
もっと言ってくれ。
「そう言やミオちゃんって何歳やったっけ?」
「え? 今年で十歳になったばかりだけど?」
「そうか、十歳か。まぁ有りやな」
ミオの歳を聞いた佐藤が、突然不吉な言葉を口走った。
こいつ、もしかしてショタっ娘のミオまでもストライクゾーンに設定してやがるのか。
「おい佐藤。まさかとは思うけど、俺のミオに手を出そうなんて、邪 な事考えてるんじゃないだろうな」
「い、いやいやそんな。今のは冗談やがな」
「ほんとかねぇ。お前の事だから、自分好みの子は、見境なく行くつもりだったんじゃないの?」
「アホな事言うなや。さすがに小学生のミオちゃんに行くほど、オレはロリコンやないぞ」
「ミオは男の子だよ!」
ボケているのか本気で女の子だと思い込んでいたのか分からないが、とにかく俺は全力で突っ込みを入れた。
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