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31.休日明けのとある一日(3)
「せ、せやったな。しかしまぁ、日がなこの子の写真を見とると、とても男の子には見えんわな」
佐藤はそう言いながら、俺のデスクに飾ってある、ミオの顔写真を挟んだフォトフレームに目をやった。
「それは各地で言われるよ。もっとも、本人は女の子っぽいって自覚は無いみたいだけどな」
「あー、そういうタイプは将来女の子にモテモテになるかも分からんで。気ぃつけときや」
「何に気を付けるんだ?」
「そら、ミオちゃんが大人になった時、女の子を取っ替え引っ替えする事にや。捨てられた女の恨みは恐ろしいでな」
「それ、〝経験者は語る〟なのか?」
「オレ一途やから、そんな事せえへん」
一途であるという事を、さも自慢であるかのように言い張る佐藤の顔は、これ以上ないまでに白々しかった。
こいつは嘘が顔に出るタイプだ。
「ああそう。お前のレベルで一途だったら、世の中の男は全員硬派って事になるな」
「ちょっと待ったらんかい。ほな、わしゃプレイボーイ扱いか!」
「みたいなもんだろ。こないだ別れたユキちゃんと付き合う数日前まで、他の彼女がいたって自分で言ってたじゃん。俺は覚えてるんだからな」
「ぐっ。その話をされると返す言葉がないわ……」
「とにかくうちのミオは、そんな取っ替え引っ替えするような軽い性格じゃないから、心配はいらないよ」
「さよけ。まぁ、ミオちゃんの最も間近におる柚月がそう言うんやったら、そら間違いないわな」
「うん」
現状ミオは俺にぞっこんだから、悪い虫が付いたり、よほど強引な奴でも現れない限り、ミオと俺が結婚するのはまず間違いない。
ただ、人の性格は環境によって変わるものなので、佐藤の言う事も確かに一理ある。
でも、四年前のあの時からずっと想っていてくれた子だからなぁ、やっぱりそのセンは無いかな。
ところで、そのミオとの結婚の話だが、佐藤にしてもいいのかどうかが迷うところなんだよな。
言わばカミングアウトになるわけだし。
俺がショタコンなのはまだいいとして、同じ性別のミオと結婚するって話を聞かされたら、普通の人は引くかも知れない。
今の日本は、LGBT、つまり〝セクシャルマイノリティに〟対して、理解が広まっているとは言い難い状態だから。
そもそも俺は、どっちのミオが好きなんだろう?
普通の男の子としてのミオなのか、それとも、女の子らしさに溢 れるショタっ娘としてのミオ?
いや、これは考えるまでもないな。どちらも当然好きなのではあるが、我が子としては前者で、恋愛対象になるのは間違いなく後者、ショタっ娘の方だ。
まず、ショタっ娘に関する俺なりの定義として、普通の男の子とは異なり、容姿やしぐさが限りなく女の子に近ければ、その子はショタっ娘なのである。
この定義は、少し年上の〝男の娘〟においても同様の事が言える。
そんなショタっ娘のミオと愛し合うのは、女の子と愛し合う事とほぼ同義であるから、俺たちのケースは同性愛には当てはまらない。
よって、俺とミオは同性愛者ではなく、どノーマルだという事になる。
……なんていう、謎の理論が世間様に通用するわけがないか。
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