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31.休日明けのとある一日(4)
一般人の見解を総合すると、結局俺は重度のショタコンで、ミオもブラコンという結論に落ち着くのだろう。
まぁ別に、そういう扱いでも構いやしないんだけどな。
このご時世、愛の形はいくつだってあるし、誰を好きになろうとも個人の自由なんだから、他人の目を気にしたって仕方ない。
ただ、現状ではそういう個人の自由を声高 に主張すると煙たがられる傾向があるので、セクシャルマイノリティとしては、当面はひっそりと過ごすしかないのである。
いつかは、みんなが分かり合えて、恋愛の多様性を広く認められる時代が来るといいなぁ。
「柚月、どないしたんや。急にボーッとしだして」
「あ、すまん。ちょっと考え事してた。えっと、俺からもみやげがあるから貰ってくれよ」
俺は考え事の中身を悟られないよう話を逸らし、みやげ物の詰まった紙袋から、しぐれ煮の瓶詰めを取り出した。
「お、何やこれ。牛肉か?」
「そう。島のブランド牛で作ったしぐれ煮だよ。お酒のつまみにいいかなって思って買ってきたんだ」
「ほー。そんな高級そうなもん、もろてええんか」
「もちろん。佐藤の予約がなけりゃ、俺たちは旅行に出かけられなかったんだからな。感謝の気持ちだと思って受け取ってくれよ」
「分かった。えらいおおきにな」
「あと、それ裸のまま持ち帰らせるのも何だから、さっきの人形と一緒に、この紙袋に入れておこうか」
「そうしてくれると助かるわ。すまんな柚月、何から何まで」
「今更よせやい、俺たち仲間だろ」
佐藤の奴が柄にもなく申し訳無さそうにするもんだから、こっちまで照れ臭くなってしまった。
ともかく、これだと思って選んだおみやげを佐藤も気に入ってくれたようだし、とりあえずは一安心かな。
「おっと、もうこんな時間や」
「あ、ほんとだ。そろそろ朝礼の集合に行かなきゃだな」
「柚月。ミオちゃんによろしく言うといてくれ。それから、みやげの礼はまた今度するさかいに、期待しといてや」
「いいよ、お礼だなんて」
「遠慮する事あらへん。次こそは、お前好みのかわいいネーチャンとの合コンをセッティングしたるから」
「はぁ……そうかい」
またこいつはネーチャンの事で頭がいっぱいなのかと思うと、自然とため息まじりの返事が出てしまう。
女っ気が全く無い俺を気遣ってくれるのは嬉しいんだけど、今はミオがいるし、合コンにはあんまり気乗りはしない。
そもそも、佐藤の言う、俺好みのネーチャンってどんなタイプを指しているんだろうか。
俺が今一番好きなのは、背が小さくてかわいくて、女の子らしくて、まるで子猫ちゃんのように無邪気に甘えてきてくれる子なんだけど、その条件を全部満たしているのは誰あろう、うちのミオなんだよなぁ。
だったら合コンでヘタに女の子を取り合うよりは、相思相愛なミオと結婚する方が幸せになれるって話なわけで。
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