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31.休日明けのとある一日(7)
ミオは惣菜の詰まったレジ袋をテーブルまで運ぶと、今度は食器棚から二人分の食器とグラスを取り、整然と並べだした。
うーん、実に几帳面 だ。
この子がうちに来て一ヶ月以上経つんだが、自ら進んで食事の準備をしてくれるようになったのは、家族らしくなってきたという意味で素直に嬉しい。
もしかして、ミオなりに花嫁修業をしているつもりだったりするのだろうか。
いや、まさかな。
「お兄ちゃん、準備できたよー」
「ありがとう。すぐ行くよ」
俺は脱いだばかりのスーツを、クローゼットのハンガーに掛けながら返事をする。
今は夏真っ盛りなので、ほんとは背広を着るのも遠慮したいのだが、大事な取引先への外回りがある営業職だと、なかなかそうはいかないのだ。
なので夏場の移動中は背広を脱ぎ、お得意先へ伺う直前に着直す、という手段を取らざるを得ない。
聞くところによると今年の夏は猛暑らしいからなぁ、バテたりしなきゃいいけど。
「いただきまーす」
テーブルの上の食器に盛られた惣菜に目を輝かせながら、ミオが元気よく手を合わせた。
今日はかぼちゃのコロッケが安かったのでたくさん買ってきてしまったのだが、かぼちゃが好きなミオは大喜びで食べてくれている。
もし全部食べきれなかったら、残りは明日お留守番をするミオの、お昼ご飯のおかずにしてもらおう。
何せ十二個も買ってきちゃったからね。
「ミオ、夏休みの宿題は進んでる?」
「うん。もう半分終わらせちゃったよー」
「え? 半分も?」
「そだよ。漢字の書き取りでしょ? それから計算問題に、社会の地図と理科のお花が出てくる問題は全部できたの」
おお、まだ夏休みに入って一週間ちょいしか経っていないというのに、すでに四教科分も終わらせてしまったのか。
半分どころか、それ以上じゃん。
この子はひょっとして、嫌な事から先に片付けていくタイプなのかな。
もっとも、ミオにとって宿題が嫌なものなのかどうかは分からないんだけれども。
「他には何が残ってるんだい?」
「んーとね。理科の自由研究がまだだよ。あとは読書感想文と、学校でもらった日記くらいかなぁ」
「もうそれだけしか無いんだ?」
「うん。でも、日記は毎日つけなきゃだから、早めに終わらせられないんだよねー」
「分かるよ。毎日の天気とかも記録しないとだし、適当な事書けないんだよな」
「うんうん」
ミオは大きく頷くと、皿の上に盛られたかぼちゃコロッケを小さく切り分け、そして口に運んだ。
「しかしミオは律儀だなぁ。そんなにぶっ続けで日記つけてたら、俺なんかそのうち書く事無くなっちゃうよ」
「そうなの? ボク、いつも『今日はいっぱいお兄ちゃんに甘えました』って書いてるんだよ」
「え。それを毎日?」
「そだよー。ソファーの上で抱っこしてもらった時とか、それだけでも日記になるでしょ?」
「ま、まぁそうだけど……」
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