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31.休日明けのとある一日(8)
リビングルームで二人が一緒にいる時、ミオはテレビを見ながら無邪気に甘えてくるので、抱き寄せて頭を撫でたり、時には膝の上に乗せて抱っこする事もある。
俺に言わせると、やっている事は至って普通のスキンシップなのだが、そのスキンシップがつぶさに記録された日記を学校の先生が読んだら、果たしてどういうリアクションが返ってくるのか、気になるところではあるよな。
変な誤解をされたりしなけりゃいいけど。
――ところで。
学校の先生で思い出したが、ミオが小学校に通うようになってから、まだ家庭訪問の案内が来てないな。
俺が小学生だった頃の家庭訪問の時期は、学年が上がって比較的すぐだったような記憶がある。
という事は、六月に編入したミオの場合だと、その時点で家庭訪問のシーズンは終わっているので、もしやるとしたら夏休みの後すぐになる公算が高い。
うちに来た先生をもてなすために、今のうちにおいしい茶菓子でも買っておいた方がいいのかなぁ。
いや、まだ案内のプリントも貰っていないのに、さすがにそれは気が早いか。
「ねぇお兄ちゃん」
「ん。何だい?」
「ボクが選んだおみやげ、佐藤さんは喜んでくれた?」
と、小首を傾げて尋ねてくるミオの顔は、ちょっと不安げな様子だ。
そういや、ミオからのかわいいおみやげに関して、佐藤から言付けを頼まれてたんだったな。
「うん。佐藤のやつ、ミオは優しいって感激してたよ。あと『ミオちゃんによろしく言うとってくれ』だってさ」
「んー? よろしく?」
よろしくというフレーズを聞いた途端、ミオがより一層、首をひねって考え込みだした。
一般的に、「よろしくお伝え下さい」といった挨拶は、ビジネスシーンで使われる事が多い。
だが、ミオのような小さい子にそれを言われても、額面通りに受け取って、一体何をよろしくやればいいのかと考え込んでしまうのである。
なのでこの場合は、よろしくという言葉の真意を分かりやすいよう、適切な言い換えをしてあげる必要があるだろう。
「ごめんごめん。要するに佐藤は、『ありがとう、大事にするね』って言いたかったんだと思うよ」
「そうなんだ。カボカボちゃん人形、気に入ってくれるといいなぁ」
「大丈夫さ。ミオが一生懸命選んでくれたおみやげなんだから、きっと佐藤のやつも大切に飾ってくれるよ」
「うん。ありがとうお兄ちゃん」
言葉足らずな佐藤のフォローをすべく、あいつが言いそうな事や、やりそうな事を繕 って代弁してみたのだが、それを聞いているミオは終始、控えめな笑顔を見せていた。
うーん、言葉選びを間違えちゃったかなぁ。これでは、かえって気を遣わせてしまったような気がする。
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