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31.休日明けのとある一日(9)
ミオにがっかりさせたくないがために、よろしくという挨拶に肉付けをした俺が悪いんだが、だいたい佐藤も佐藤だよ。
ミオが大人になったらモテるから注意しとけとか、女の子の話ばかりに持って行って、結局、まだ十歳の子供相手に「よろしく言っといてくれ」しか言わなかったんだから。
そんな曖昧 なセリフじゃなくて、お世辞でもいいから「気に入った」の一言でもコメントしてくれよと俺は思うのである。
まぁ、これ以上は何も言うまい。
あいつはあいつで、どう感想を述べるべきか迷ったあげくの「よろしく」だったんだろう。
そういう事にしておく。
「ごちそうさまでした! コロッケたくさん食べちゃった」
晩ご飯を米粒ひとつ残さず食べ終えたミオが、満足げな顔で手を合わせた。
たくさんとは言ったものの、もともとミオは少食なため、食べたコロッケは三つが限界だったようだ。
ちなみにコロッケ一つの大きさは、大人の手のひらより一回り小さいくらいである。
そのコロッケを主なおかずとして、あとはポテトサラダと味噌汁、納豆、そして子供用のお茶碗に注いだ白飯が半分。当然おかわりは無し。
そりゃあ太らないわけだよ。
「俺が五つ食ったから、残りは四つか。これ、明日の分のおかずにしていい?」
「うん。お昼ご飯で食べるー」
「それじゃラップして冷蔵庫に入れておくから、明日はレンジでチンして食べてね」
「はーい!」
明日も大好きなかぼちゃコロッケを食べられるからか、ミオは嬉しそうに返事をした。
ただ、コロッケの性質上、次の日には揚げたてのサクサク感が消え、衣がややしんなりとしてしまう。そこが申し訳ないところだ。
普段はこんな感じの食事なのだが、今度の土曜日には、ミオにおいしいイカ飯を食べさせてあげたい。
そのためには、ネットをフルに活用して、できるだけ近くて評判のいい店を見つけないとな。
「さーて。それじゃあ、チャッチャと洗い物を済ませるとしますか」
「ねぇねぇお兄ちゃん」
「ん?」
「ボクも洗い物のお手伝いしていい?」
「ああ、もちろんだよ。ありがとな」
嬉しい申し出のお礼として頭を撫でると、ミオは幸せそうな表情で、俺の体に頬をくっつけ、こすり付けるように甘えてきた。
うーん。いつもの事ながら、愛らしくてほっこりするな。
こうやって頬をすりすりさせる癖を見るにつけ、やっぱりミオは〝子猫ちゃん〟という例えがふさわしいと思う。
そうだ。今度、猫耳とか尻尾が付いたグッズを買ってきて、コスプレさせてみようかな。
そして猫語でしゃべらせたり、甘えさせたりして……。
いかんいかん、想像しただけで胸がキュンとしてきた。俺一人、頭の中で勝手に盛り上がっている場合ではない。
コスプレの事はひとまず置いといて、早く洗い物を済ませ、おいしいイカ飯を食べさせてくれるお店の調査に取り掛かるとしよう。
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