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32.イカ料理を食べよう!(1)
「ねぇお兄ちゃん。ネットって〝すまーとほん〟を使って見るの?」
「いや、今日はパソコンの方で調べようと思うんだ。大きい画面の方が、二人で一緒に見られるだろ?」
「なるほどー。そうだね」
納得したミオがうんうんと頷く。
我が家にあるパソコンは、パソコン専門ショップにて二年前に買ったばかりの、割と新しい型のものである。
とは言っても、パソコンの性能は向上していく一方だし、ゲーミングパソコンのようにレスポンス重視でもないから、若干のパワー不足は否めない。
もっとも、俺はこのパソコンでネットサーフィンをしたり、動画を観たりする程度の用途でしか使わないので、多少の型落ち感があっても気にはならない。
仕事で私用のパソコンを使うなんてもってのほか。そもそも俺は仕事を家庭に持ち込まない主義なのである。
我が家のパソコンに仕事のデータを出力して、万が一コンピューターウイルスに感染して個人情報の流出なんかを引き起こしたら、俺は会社にいられなくなる。
そんなリスクを背負ってまで社畜に徹するつもりは毛頭ないし、それ以前に会社の規則でもデータの社外持ち出しは固く禁じられているから、会社用と家庭用で、それぞれパソコンを使い分けるようにしているのだ。
我が家におけるパソコンの用途に限れば、もしウイルスに冒されても、せいぜいこの間通販で購入した、ミオのショーツに関する取引のメールが漏れるくらいだろうし、それなら俺がロリコンの変態か何かだと勘違いされるだけで済む。
あらかじめ断っておくが、俺はロリコンじゃなくてショタコンだから。
……さて、パソコンの起動が終わってネットにも繋がった事だし、さっそくイカ飯について調べるとするか。
「うーん。まず検索するべきなのは、やっぱりうちの近所でイカ飯を作っている食堂があるかどうか、だよなぁ」
「イカ飯ってそんなに珍しいの?」
俺の隣にちょこんと座ったミオが、素朴な疑問をぶつけてくる。
「イカ飯自体は、たぶんスーパーでも売ってると思うんだよ。でも、食堂のメニューとして出すなら、よほどイカ料理に自信がないとね」
「そうなんだ。じゃあイカ飯を作るのは大変って事なのかな」
「たぶん」
と、あまりにも自信無さげに返事をした自分の、知識不足が悔やまれる。
そもそも、イカ飯を作るのが大変な事なのかどうかすら、俺は分かっていないのだから。
近くに食堂があるのかどうかの前に、まずはイカ飯とは何であるか、そしてその製法に関する情報を集める必要がありそうだ。
イカ飯を知らずして、イカ飯を語るべからず。
なんて言ってみると、さも有名な格言であるかのように聞こえるかも知れないが、要するに「知ったかぶりをすな!」という話なのである。
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