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32.イカ料理を食べよう!(2)
「ミオ。最初に、イカ飯の作り方から調べてみてもいい?」
「うん。ボクも作り方知りたーい」
彼氏主導のデートプランなら、イカ飯とは何であるかを教えてあげるために、あらかじめ、イカ飯の作り方や食材について詳しく知っておくのがベターだろう。
その下調べをショタっ娘の彼女と一緒にやろう、と持ちかける男ほど間の抜けたものは無いのだが、ミオは嫌な顔ひとつせず、情報収集に付き合ってくれるというのである。
これが天使と言わずして何と言おうか。
その天使を退屈させないよう、イカ飯の製法について効率のよい調べ方をするのが、今の俺の使命なのだ。
「んーと。このサイトなんかどうかな。タイトルに『チンパンジーでもできる! カンタンなイカ飯レシピ』って書いてある」
「チンパンジーって料理できるの?」
その質問を聞いた途端、俺はブハッと吹き出しそうになり、とっさに口を塞いだ。
ミオは率直に、自分がよく知らないチンパンジーの生態を尋ねているのだが、あろうことか、俺は頭の中でチンパンジーが中華鍋を振っている様子を思い浮かべてしまったのである。
おいおいチンパンジーさんよ、その中華鍋を持って、一体何ができるんだい。
と、自分に突っ込んでいても仕方がない。ここは純粋なミオの問いに対し、真摯 に答えなければ。
「えーとな。これはものの例えなんだよ」
「ものの例え?」
「そう。チンパンジーは料理ができない動物なんだけど、このサイトはそんなチンパンジーですらやれそうなくらい、簡単なイカ飯の作り方を教えてくれるんだろうね」
「ふーん。じゃあボクでもできる?」
「もちろんだよ。ミオはチンパンジーより賢いんだからさ」
純粋なミオの問いに、うっかり「できる」と答えてしまったが、「できない」と言ったらあまりにも夢がなさすぎるし、何たってチンパンジーにでもできるっていう触れ込みなんだから。
そもそも人間のミオとチンパンジーの知能を比べる事がミオに失礼な話なのだけれど、こういう考え方をすると、チンパンジー側からクレームが来たりするのだろうか。
「チンパンジーの件は、まぁそういう例えだという事だから、さっそく作り方をチェックしてみようよ」
「うん! 見よう見ようー」
ミオの疑問が解け、同意も得られたので、さっそく当該サイトを開いてみる。
ほー、まずはイカ飯の起源から教えてくれるのか。
さすが、チンパンジーでもできると謳 っているだけの事はあって、サイト構成も絵付きで分かりやすそうだな。
「この説明によると、『イカ飯は、北海道の南部にある渡島 地方で生まれた郷土料理なのです』だってさ」
「北海道って、日本の一番北だよね」
「そうだね。ずーっと昔に、お米を節約するために作られたのが始まりらしいな」
「じゃあ、イカはお米の代わりなの?」
「まぁそういう事かな。当時、不足していたお米が少なくてもできる料理を考えて、食材を探した結果が、当時豊漁だったスルメイカだった……って書いてあるよ」
「へぇー、すごいアイデアだね。ボクだったら、イカにご飯を詰めようって思わないもん」
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