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32.イカ料理を食べよう!(6)
「うーん。どうやらうちの近くには、イカ飯を食べさせてくれるお店は無いみたいだね」
「そうなの? どうしてだろ……」
隣でネットの検索結果を覗き込むミオが、ちょっと困ったような横顔を見せた。
「実は炊き込みに手間がかかる、みたいな理由かなぁ? もしくはご当地グルメじゃないからとか」
「ご当地グルメってなーに?」
「んーとな。簡単に言うと、その土地ならではで盛んに作られるおいしい料理ってとこかな。例えば長崎県なら、皿うどんとか佐世保バーガーみたいな、ね」
「あ! 佐世保バーガーならボクもテレビで見た事あるよー。すごくおっきいんだよね」
「うん。ああいうのって、ご当地、つまり佐世保で作るからこそご当地グルメと呼ばれるんだよ。だからこっちでは佐世保バーガーのお店は無いだろ?」
「そだね」
今の説明でミオが全てを理解したらしく、こくこくと何度も頷いてみせる。
と言っても、イカ飯は佐世保バーガーとは違って、比較的全国でも作られるようになったポピュラーな料理だから、近所にお店があっても良さそうなものなんだけどな。
もしかすると、ネットに載っていないような、古めかしい小料理屋がひっそりと提供しているとか?
だとすると、探すのは骨が折れるな。
「ミオ。グルメサイトをチェックしてみようか」
「グルメサイト?」
「そう。と言っても、今から見るのは、俺たちが住んでるところから、比較的近くにある食堂とかレストランなんかの情報が載ってるサイトなんだけどね」
「うんうん」
「その中から、イカ飯っていうキーワードでヒットするお店の評判を、これから詳しく調べてみようと思うんだ」
「評判を調べるの?」
「そう。せっかく行った店が騒々しかったり、おいしくない料理を出すところじゃ、せっかくのデートが台無しになっちゃうだろ?」
「なるほどー。お店探しも大変なんだね」
俺が一人で行って失敗するならまだいいが、かわいいショタっ娘のミオを連れて、外食デートという体でイカ飯を食べに行くのだ。
だからこそ、いかに近くにあろうとも、評判の良くない店は極力除外していかなければならない。
「お。ここなんか良さそうじゃないか? イカ料理専門店だってさ」
「んー? なんだか難しい漢字のお店だね」
「イカ料理のお店だから『烏賊貴族 』って名前を付けたみたいだな」
「〝いかきぞく〟ってどういう意味なの?」
「さぁ……たぶんフィーリング、というかその場のノリで付けたんだと思うけど。とにかく、イカには自信がありそうだよ」
烏賊貴族という名前を聞くと、かつて某俳優が主演で放映していた刑事ドラマを思い出すんだが、今の子供はまず知らないだろうな。
かく言う俺も再放送組なんだけどね。
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