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33.夜のデートはイカ尽くし(1)
グルメサイトで、イカ料理専門店の予約を取った数日後の土曜日。
俺たちは、マイカーに乗って店を目指した。
あれからもう少し店について調べたところ、どうやら敷地内に駐車場があるそうなので、車を停める場所探しをしなくて済むようになったのだ。
でも、あのお店はビールを始めとした各種のお酒をメニューに出してるんだよなぁ。
その辺は大丈夫なのかな。
一応、「車でお越しのお客様にはアルコール類の提供はいたしません」くらいの注意書きをして、予防線は張っているんだろうけど、他の客がそれを守るかどうか。
とまぁ、あれこれ考えてみたが、俺が心配するような事じゃないのは分かってるんだ。
どうせ、車で行く以上お酒を飲むつもりは無いし、仮にあのお店で飲酒した後に車を運転して捕まった人がいても、俺たちには関係ないし。
ただ、俺とミオは、あくまでおいしいイカ料理を食べるためだけにお店へと向かっているのだから、そこでアルコールが入り気が大きくなって、やたら店内で騒ぎ立てるような、迷惑な客と居合わせるような憂き目に遭うのだけは、どうかご勘弁願いたいと思うのである。
せっかくのデートがブチ壊しになるから。
「ミオ、暑くないかい?」
「うーん。ちょっとだけ暑いかも」
「了解。ちょっと待っててな」
お店へと向かう車内で、若干の蒸し暑さを感じたのであろうミオのために、カーエアコンの温度設定と風力を調節する。
いかに時刻が十九時に差し掛かろうとしていても、七月下旬は夏真っ盛りなので、窓を締め切った車の中は、どうしても暑くなるのだ。
かと言って窓を全開にすると、今度はぬるーい温風のようなものが流れ込んできて、余計に汗ばむハメになるから、夏場はやはり密閉状態にしてからのクーラーが必須になる。
そういう事情を鑑み、カーエアコンの設定温度を多少低くした事で、さっきよりも、よりひんやりとした風がそよぎ出した。
助手席に座ったミオは、その冷風を全身に浴び、いかにも快適そうな顔をしている。
「ねぇお兄ちゃん。お店ってどこにあるの?」
「えーとな。このナビによると……」
信号待ちの時間を利用して、俺はカーナビゲーションシステムを操作し、目的地であるイカ料理専門店、『烏賊貴族 』の場所を表示させた。
「イカ料理のお店は魚市場の近くに建ってるみたいだね」
「うおいちば?」
「そう。魚市場ってのは、海で獲った新鮮な魚を売っているところなんだよ」
「魚! じゃあ、アジも買える?」
ミオは、自分の中で一番のお気に入りである食材の魚というフレーズに目を輝かせ、真っ先に、魚市場によるアジの取り扱いについて尋ねてくる。
こう思うのも今更ではあるが、うちの子猫ちゃんは、心底お魚さんが大好きなんだろうな。
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