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33.夜のデートはイカ尽くし(6)

「はいお兄ちゃん、メニューだよっ」 「うん、ありがとう」  さてさて、このお店では、一体どんなイカ料理が食べられるのかな。  前々から決めていたイカ飯と、フェスタでお得な値段になっているアオリイカの天ぷらは外せないとして、他に興味を引かれるようなメニューは何があるのか。  うーん、いきなり後ろのページから見たせいか、イカの塩辛が真っ先に目に入ってしまったぞ。  いかにご飯に合うと言っても、この店ではさすがにこれは酒のアテだよなぁ。  そもそも俺はイカ料理をおかずに、腹いっぱい白飯をかっ込みたいんだ。  確かにイカ料理の一つではあるけど、いきなりご飯のお供を頼むのはさすがに無いから、塩辛はひとまず見送りにしよう。  ……お、この〝イカのぽっぽ焼き〟ってうまそうじゃないか?  この醤油ベースでテラテラになった姿焼きの見た目はものすごく食欲をそそられるし、何よりお祭りの屋台で食べるイカ焼きのようでもあるから、子供の頃を思い出してワクワク感を抱かずにはいられないのだ。  うん、決まりだ。まずはこいつをいただくとしよう。  肝心なのは、このぽっぽ焼きと一緒に食べるご飯ものなんだが、イカ飯以外に何があるのだろうか。  普通の白飯があればそれに越した事はないんだが、たまには変化球で攻めてみるってのも有りかもなぁ。 「ミオ、何が食べたい?」 「んとね。ボクは天ぷらと、この黒いのが食べてみたいな」 「黒いの?」 「うん。これだよー」  ミオが広げたメニュー表で指差して見せた写真は、イカゲソと豚バラ肉入りのイカスミ炒飯、というご飯ものだった。  なるほど、イカ料理専門店で豚バラ肉を使った炒飯が食べられるのか! こりゃ確かに変化球だな。 「いいね。ただ真っ黒なだけじゃなくて、ネギも散らしてあるから色味もいいし、何よりおいしそうだ」 「でしょ? お兄ちゃんも食べる?」 「そうだなぁ。せっかくイカ料理のお店に来たんだし、イカにまつわるご飯ものって事で、その炒飯をいただいてみようか」 「じゃ、ご飯は決まりだね」 「ああ。いやちょっと待てよ、肝心のイカ飯はご飯ものになるのかな?」 「ん? どゆことー?」 「いや、このイカスミ炒飯とイカ飯の両方を頼んだら、ご飯ものがダブってしまうんじゃないかと……」  という話を聞いたミオは、メニュー表を持ったまま、目線を右斜め上に向けてしばし考え込む様子を見せ、そしてこう切り出した。

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