265 / 834
33.夜のデートはイカ尽くし(7)
「ボクとお兄ちゃんで半分こにする?」
「半分こ?」
「そ。イカ飯と炒飯をどっちも頼んで、二人で半分ずつ食べるの」
「なるほど、そりゃいい考えだね。じゃあ、ご飯ものは半分こにしよっか」
「うん!」
自分の提案を受け入れられたミオは眩しいほどの笑みを作り、そして大きく頷く。
ここへ来る取っ掛かりはイカ飯だったけど、何よりミオに喜んでもらいたくて今回のデートを企画したんだから、好きなものを好きなだけ食べるのが一番だよな。
「俺はこのぽっぽ焼きってのを頼むつもりなんだけど、ミオも一緒に食べない?」
「わぁ、おいしそう! ボクも食べるー」
「よし、決まりだね。他には何がいいかなぁ」
「お兄ちゃん、これはどう?」
「ほうほう、期間限定、茹でイカと夏野菜のサラダか。んじゃそれも頼んじゃおう」
しかし、こうしてメニュー表をめくって、数々のお品書きを眺めていると、一口にイカ料理と言っても、バリエーションがたくさんあるもんなんだなぁ。
イカ料理だけでご飯もの、おかず、そしてサラダが決まったのはいいとして、せっかくならイカにまつわる汁物も欲しいところだ。
何か目を引くものはないかな。
「ミオ、スープか味噌汁で良さそうなのあるかい?」
「ちょっと待ってね。メニュー見てみるー」
本来なら、デートに誘った俺が率先してリードするのが筋なのだろうが、ここは、うちのかわいい子猫ちゃんの直感に任せるとしよう。
「んー……全部おいしそう」
「はは、分かるよ。料理の写真を見てると、どれもうまそうに見えるんだよなぁ」
ミオはメニュー表に掲載されている汁物コーナーの品々を、必死な表情で見比べている。
おそらくミオの事だから、どれがおいしそうかという点に加え、その品の値段をも考慮に入れている事だろう。
ミオには常々、お金の心配はいらないって言い聞かせてはいるんだが、それでもやはり気を遣うようだ。
我が子としてはまだ遠慮している部分が多いと言わざるを得ないが、これが彼女だったら百点満点だよ、ほんとに。
「お兄ちゃん。ボク、イカ団子と野菜のコンソメスープってのがいいなぁ」
しばらくメニュー表とにらめっこしていたミオが選び出したのは、実にヘルシーそうな見た目のスープだった。
「へぇ、イカを団子にしてキャベツと玉ねぎ、あとはカイワレ大根を煮込んで作るんだな。おいしそうだねぇ」
「でしょ?」
「よっしゃ! それじゃあ汁物はこのスープで決めちゃおう」
「うんうん」
これでイカ料理のフルコースは完成、と言いたいところだが、どうせなら食後のデザートも欲しいなぁ。
ただ、いくらイカ料理専門店とは言っても、さすがにイカを使ったデザートなんて無いんじゃないか。
あったらあったで驚くけど。
ともだちにシェアしよう!