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33.夜のデートはイカ尽くし(8)
「ミオ。デザートは何がいい?」
「デザート?」
「そう。アイスクリームとか、ケーキみたいな。メニューに載ってないかな」
「あ。後ろのページにいろいろあるよ。甘口醤油のイカせんべいと、イカスミアイスでしょ。あとはイカモナカとか」
「イカモナカってあるんだ?」
「うん。イカの形をしたモナカにつぶあんとアイスクリームを詰めてるんだって」
「それ、おいしそうだなぁ。じゃあ俺はイカモナカにしよっかな」
「ボクも食べてもいい?」
「もちろんいいよ。二人分頼んで、一緒に食べようよ」
「えへへ。ありがと、お兄ちゃん」
大好きな甘いものを二人で食べられるという事がよほど嬉しかったのか、ミオはこれ以上ないくらいニコニコしている。
うーん、かわいい。ミオの取るリアクションは、いつもながらキュートでほっこりするよなぁ。
実は、デザートではイカスミアイスってのも気になったんだが、決め手になったのは、イカを象 ったモナカのガワが、童心をくすぐられたからだと思う。
食べたいものが決まった俺たちは、呼び出しボタンを押して店員さんに来てもらい、二人で決めた料理やスイーツをどんどんオーダーしていく。
注文の最後に「ドリンクはいかがいたしましょう」と聞かれたので、俺は烏龍茶、そしてミオは定番のオレンジジュースを頼むことにした。
さすがに飲み物まではイカの手、もとい足が及ばなかったらしく、メニュー表に載っていたラインナップは、至って普通のものばかりである。
まぁ仮にイカスミジュースなる飲み物があったとしても、そこまでしてイカにこだわるつもりは無いし、さすがに頼まないかな。
とにかく、これで注文は全部通してしまった事だし、あとは各種イカ料理がテーブルを彩るのをひたすら待つだけだ。
「ミオ、見てごらん。あっちにイカがたくさんいるよ」
俺はミオに退屈させないよう、生簀の方を指差し、透明の強化ガラスで囲まれた水の中を遊泳するイカの姿を見せた。
「わぁ。白いイカがいっぱいいるねー」
「あれは何イカなんだろう。結構大きいけど」
「あのイカにご飯を詰めるのかな?」
「うーむ。だとしたら、イカ飯だけでお腹いっぱい食べられそうだね」
「どうしよう。ボク、炒飯も頼んじゃったよー」
「ははは、まぁ大丈夫だよ。ミオが食べ切れない分は、俺が引き受けるから」
ミオは普段から少食なので、まず、ご飯を茶碗いっぱい食べる事はない。
だから、あれだけ大きいイカを使ったご飯ものが出てきた場合、自分が残してしまうのではないか、という心配をしたのだろう。
ただ、この店が出すイカ飯が、一体何イカを使った料理なのかは判然としないので、ほんとにあの生簀にいる大きめのイカを使うかどうかは分からないのである。
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