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33.夜のデートはイカ尽くし(13)

「やった! お兄ちゃん、イカちゃんが釣れたよー」 「すごいなミオ、初めてにしてはうまいじゃん」 「えへへ、ありがと。お兄ちゃんが分かりやすく教えてくれたから、ボクでもできちゃった」  生簀における挑戦ではあるが、生まれて初めて、自分の力でイカを釣り上げられた事には違いない。  ミオの溢れんばかりの笑顔を見るに、喜びや達成感もひとしおといった感じだ。  ささやかだけど、この子にイカ釣りを体験させてあげられて、ほんとに良かった。  ――ところで、今しがた釣り上げたヒイカのサイズは、大人の手のひらに収まる程の小ささではあるのだが、それでもイカスミを吐くだけの力は持っている。  かようなリスクがあるので、ミオの着ているかわいいシャツがイカスミで真っ黒けにされないようにと、店員さんが竿ごとヒイカを受け取ってくれる事になった。  店員さんはカンナからヒイカを手早く外し、生簀の前に置かれている小さな桶へと移す。  今回の釣りのノルマは一人一杯。よって、あとは俺が釣り上げれば、このイカ釣り体験は大成功に終わるのだが……。 「うーん、俺の方には、なかなかイカが寄って来ないな」 「どうしてだろ。イカちゃん、お腹いっぱいなのかな?」  釣りを終えたミオが、俺の隣にくっついてかがみ込み、生簀で泳ぐヒイカと餌木の様子を目で追っている。  そのミオを横目でチラリと見て、俺は思わずドキッとしてしまった。  ミオが好んで着る服は極めて薄着、かつ肌の露出面積が大きいので、丈の短いショートパンツから伸びる太ももは、当然での露出という事になる。  頭の中で男の子だとは分かっていても、こんなに色白の美脚を目の当たりにすると、否応なしに胸の鼓動が高まってしまうのだ。  その魅力的な太ももに目を奪われて、俺が真っ先に抱いた感想は、ミオの脚ってスベスベして綺麗だなぁって事。  そりゃ各地で女の子に間違えられるよな。  っと、いかんいかん。いかにミオの生足が美しいからといって、本来の目的を忘れてドキドキしている場合ではない。  今はおいしいバター炒めを食べるため、ヒイカ釣りに専念しなくては。 「こんだけしゃくっても反応が無いって事は、ひょっとすると、イカが餌木を見切ってるのかもね」 「見切ってるってなぁに?」 「簡単に言うと、これが誰かの仕掛けたワナだって見抜いたって事だな」 「そんな事あるんだ? イカちゃんって賢いんだねー」 「昔スルメイカ釣りで使った、キビナゴを巻きつけた仕掛けでも、一部分だけ食べて逃げられたりしたからね。かなり賢い生き物だよ」 「んー。頑張って、お兄ちゃん!」  ミオが両こぶしをぎゅっと握り、俺に黄色い声援を送ってくれる。  嬉しいなぁ。こんなにかわいいショタっ娘から応援してもらえるなんて、俺は幸せ者だよ。  ミオの期待に応えるためにも、ここは何としてでも、自力でヒイカを釣り上げなければ。

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