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34.実食、イカ料理(6)

「あ! これ、そんなに塩辛くないよー。口の中で、お茶のすごくいい匂いがするの」 「天ぷらに合いそう?」 「うん。ボク、天つゆよりも、このお塩で食べる方が好きかも」 「そっかそっか、抹茶塩の良さが分かっちゃったか。ミオもこれで、大人の階段をまた一段上ったわけだな」 「ん? どゆこと?」 「ミオがちょっとだけ大人に近づいたって事さ」 「そうなの? じゃあボク、今からお兄ちゃんのお嫁さんになれる?」 「え! い、いや、それはもうちょっと先の話かなぁ」 「……むー。いいもん、じゃあ来年の誕生日まで待つもん」  ミオはそう言って、再び耳心地のいいサクサク音を立てながら、アオリイカの天ぷらを食べ始めた。  もうミオの中では、自分の次の誕生日に、俺と結婚するってのが決定事項になっているようだ。  まいったなぁ、ミオがお嫁さんになりたいって言ってくれるのは嬉しいんだけど、来年、こんなに幼いショタっ娘と年の差婚しちゃったら、果たして誰に何を言われるやら。  お盆にはこの子を連れて実家に帰省するつもりなんだが、ミオの事を親父とお袋に、果たしてどう紹介すればいいのか……。 「お待たせいたしました。こちら、ヒイカのバター炒めになります」  来たる盆休みの事で頭を悩ませていると、店員さんが、作りたてでホクホクなバター炒めを届けに来た。 「わー、すごくいい匂いがするね、お兄ちゃん」 「うん、確かにいい匂いだ。たぶんこれは、バターと醤油をからめて炒めたんだろうな」 「でも、ボクたちが釣ったヒイカって、こんなに小さかったかな?」  ミオは輪切りにされ、皿に盛られたヒイカを眺めながら、そのサイズに疑問を抱く。 「うろ覚えだけど、イカは熱が加わると、身が縮むって聞いたことがあるから、きっとそれなんだよ」 「なるほどー」 「ところでこのバター炒め、結構ボリュームあるな。イカ以外に何を使ってるんだろう?」  バター炒めに使われている、ヒイカ以外の食材の正体が分からない俺は、ざく切りされた野菜らしきものを、さまざまな角度から眺めてみた。  ひょっとしてカブを使っているんだろうか?  でもカブは夏が旬の野菜じゃないしなぁ、やっぱり違うかな。 「すんすん……これ、ジャガイモだよ。お兄ちゃん」  うちの子猫ちゃんは、お得意の嗅覚を駆使して、ヒイカ以外に用いられた食材を言い当てる。 「そっか、ジャガイモかぁ。という事は、じゃがバターとしても楽しめるってわけだな」 「じゃがバター?」 「居酒屋とかで出される定番メニューだよ。蒸かしたジャガイモにバターを塗って食べるんだ」 「へぇ、そんなのがあるんだね」 「きっとこれもいい味出してると思うよ。て事で、せっかく作りたてが来たんだし、温かいうちに食べちゃおっか」 「うん! ボクもじゃがバター食べるー」

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