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34.実食、イカ料理(7)

「はふはふ。これあひゅいよ、お兄ひゃん」 「え、さすがに熱すぎたか。お水飲む?」 「んーん、だいひょうぶ」  とは言うものの、やはりジャガイモの方は熱がこもりすぎているのか、なかなか噛みきれない様子だ。  ミオは、熱々のじゃがバターを口の中で冷ましながらゆっくりと咀嚼し、飲み込み終えると、火照った顔を扇いで一息ついた。 「ふー、熱かったぁ」 「はは。それで、初めて食べたじゃがバターの感想はどうだった?」 「ジャガイモに味がしみ込んでるからおいしかったよー。でもすっごく熱いから、お兄ちゃんも気をつけてね」 「了解。じゃあ、ちょっと冷ましてから食べるようにするよ」  俺は一口サイズのヒイカとジャガイモを小皿に盛り、火傷せず食べられるようになるまで、しばらく放熱させる事にした。  この料理、ジャガイモもヒイカと同様に炒められたわけだが、パセリも散らされているし、コンセプトとしては和風ジャーマンポテトになるのかな?  これでウインナーが添えられていたら、ほぼ完全にジャーマンポテトなんだけど。  バター炒めの熱が冷めるまで、イカ団子のコンソメスープをすすったり、天ぷらをおかずにして炒飯の残りをかっ込んだりしていると、小皿に盛ったバター炒めの湯気が少なくなってきた。 「そろそろいいかな。いただきまーす」  今こそ食べごろだろうと判断し、俺はヒイカと、ホクホクのジャガイモをまとめて頬張る。 「どう? お兄ちゃん。熱くない?」 「うん、平気だよ。今はちょうどいい熱さになってるから、ミオも食べてごらん」 「じゃあボク、今度はイカちゃん食べるー」  ミオは、バターで香り付けされたヒイカのイカリングを箸でつまみ、ふうふうしてから少しだけかじってみせた。 「あ、ちょっと甘辛くてふわふわしてる! バター炒めってすごく香ばしいね、お兄ちゃん」 「そうだな。バターを溶かして食材に(から)めると、こんな感じで食欲をそそる香りが出るんだね。あと、口当たりがまろやかになって食べやすいし」 「そだね。お兄ちゃんの釣ったイカちゃん、とってもおいしいよー」  実を言うと、さっき運ばれてきたヒイカのバター炒めは、俺たちが釣った分をまとめて一皿に盛り付けてあったのだ。  なので、どのイカリングが、どっちの釣ったものかはひと目では分からない。  だけどミオは、このヒイカのバター炒めは全部俺の釣果によるものとして、喜んで食べてくれているのである。  何て心優しい子なんだろう。ほんとにうちのショタっ娘ちゃんは天使みたいだ。

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