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34.実食、イカ料理(8)

 顔は女の子にも負けないくらいかわいいし、肌はスベスベで綺麗だし、そしてキッチリと彼氏を立ててくれる気立ての良さを持ち合わせている。  俺の理想とする彼女像の条件を全部満たしているショタっ娘なんて、日本でどこを探しても、きっとミオか、こないだのリゾートホテルで出会ったレニィ君ぐらいしかいないだろうな。  そう言えばあの双子のショタっ娘、今ごろどうしてるだろうか。  親御さんとは仲良くやれてるのかな。  お別れの時、あの子たちの住所と、レニィ君が持っている携帯電話の番号が書かれた紙をもらったんだけど、まだ連絡を取った事はない。  直電なんてしようものなら、その会話のやり取りを見たミオがやきもちを焼きそうだし、やっぱり二人で手紙を書いて送るのが、最も無難かもなぁ。 「んー? お兄ちゃん、どうしたの?」  俺がイカ料理を食べる手を止め、考え事をしていると、ミオが不思議そうな顔で覗き込んできた。 「え? あ、いや、何でもないんだ。ちょっとぼんやりしてただけだよ」 「あー、分かった。女の子の事でも考えてたんでしょ」 「ま、まさか」  女の子じゃないけど、その性別に限りなく近いショタっ娘の事は思い出していたから、ミオの直感による推測は、あながち外れてはいない。  これが第六感というものか、なんて感心している場合ではない。また浮気の疑惑をかけられる前に、先手を打って話題を変えなくては。 「ミオ、おかずは足りそう? 他に食べたいものがあったら注文しよっか」 「ボクはもういいかな。天ぷらもたくさん食たし、お腹がいっぱいになってきちゃった」 「そっか。じゃあ、バター炒めの残りを食べ終わったら、デザートを持ってきてもらおうか」 「うん。イカモナカ食べるー」  少食なミオはほぼ満腹の様子なので、追加で作ってもらったヒイカのバター炒めの残りは、俺が引き受ける事にした。  そうやって、出された料理を全ておいしくいただいた後、呼び出された店員さんがデザートを運んでくる。  たっぷりのつぶあんとアイスクリームを、イカの形をしたモナカでサンドした、この店ならではのスイーツ。それがイカモナカである。  他にもデザート候補はいくつかあったのだが、やっぱり夏は冷たいものが食べたくなるので、適度にひんやりしたアイス入りのモナカを選んだ。  あと、こういう見た目の珍しい独自メニューはなかなかお目にかかれるものではないから、写真に残しておきたくなったというのも理由の一つかな。  という事で、お皿の上に並んだ二つのイカモナカと、そのお皿を前にちょこんと座っているミオの笑顔を、スマートフォンのカメラでパチリと写した。  この写真は、二人でイカ料理デートに来た記念の一枚として、現像してアルバムに追加するつもりだ。  楽しい出来事や珍しいものなどを逐一フィルムに収めておけば、二人が見たい時、いつでも振り返れるようになる。  俺と再会するまで一人ぼっちで、さみしい思いをして生きてきたミオには、これからもたくさんの思い出を作り、一生モノとして残しておいてあげたいんだ。

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