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34.実食、イカ料理(10)
カーナビの案内どおりに車を走らせること、およそ数分のところにある海浜公園。
ここは二十四時間、三百六十五日、休むことなく開放されている、市営のデートスポットである。
敷地はかなり広大で開放的なため、中には暇を持て余したガラの悪いやつらがたむろしていたりするのかと言うと、特にそういうわけでもないようだ。
俺たちが訪れた夜の海浜公園でも、管理事務所では管理人さんが詰めているし、園内においても、定期的に巡回をする職員の姿がちらほら見られる。
つまり、たとえ夜であっても、治安に関しては何ら問題は無いという事だ。
――ところで。
いつも思うんだが、こういう入場無料の公園って、どうやって収益を上げているのかが気になるんだよな。
管理事務所のそばに設置されている自動販売機や駐車場の料金だけじゃあ、とてもじゃないけど職員さんたちの給料や公園の維持費は賄えないだろうし。
ミオと一緒に見た園内マップによると、どうやらこの公園にはシーサイドレストランや某有名カフェのチェーン店、そしてみやげ物屋などが存在するようだ。
という事実を踏まえた上で察するに、おそらくここは、お店の儲けやテナント料などが運営費用に回されているんだろう。
せっかくの機会なので、園内の見回りをしている職員さんに話を聞いてみたところ、やはり某カフェの収益がダントツらしい。
カフェは二十四時間営業で、小腹が空いたら簡単な食事も取れる。
しかも立地の関係上、海の見える位置にカフェテラスを設置してあるもんだから、この季節はいわゆる〝意識高い系〟の客がこぞって来店するのだそうだ。
さすがに、寒い冬にまで外でノートパソコンをカチャカチャやる余裕はないんだろうけど、オーシャンビューはそれだけで売りになるよなぁ。
俺たちはそんなカフェを尻目に歩き、海を間近で見られるベンチに腰掛け、そして肩を寄せ合った。
「波の音が聞こえるね、お兄ちゃん」
「うん、とっても穏やかな波だな」
「ずっと聞いてたら、こないだ泊まった、ホテルの事を思い出しちゃった」
「あのホテルも、部屋のベランダにまで波の音が届いてきたもんな。外の眺めも最高によかったし」
「そだね。すごく楽しかったよー」
あのリゾートホテルには二泊したんだが、いろんな事を体験した割には、時があっという間に過ぎ去っていったような気がする。
楽しい思い出が一瞬のもののように感じられるのって、ほんと何なんだろうな。
でも、今日のこの時間は、比較的ゆっくり流れているように思える。
特に綿密なスケジュールを組まず、ただ海を眺めているだけだからかなぁ。
現在時刻はまだ夜の八時半だから、もう少し、ここでのんびり過ごしてみようか。
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