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35.夏祭りに備えて(3)
「ミオ、お腹すいただろ? 朝ご飯食べよっか」
「うん。じゃあボク、お着替えしてくるね」
夢中で甘えていたミオは名残り惜しそうな様子で俺の手を離し、収納してある部屋着へと着替えるべく、自分の部屋へ歩いていった。
で、その去りゆく後ろ姿を見て抱いた感想が、ミオの穿いているお出かけ用のショートパンツって、すごく色っぽいデザインだよなぁって事だ。
なにぶん布面積が小さいもんだから、歩くたびに、はみ出たお尻がチラチラと見えて、目のやり場に困ってしまうのである。
これが俗に言う〝着エロ〟というものか。
服と下着はミオが自分で選んだものを着用しているから、穿いている本人が満足しているのは間違いない。
一番の驚きは、あの際どいデニムのショートパンツが、何と男女兼用のものだという事実なんだよな。
ただ、いかにユニセックスな仕様だとは言っても、女性的な顔立ちをした美少年のミオがあれを穿いていると、女の子に間違えられるのは火を見るよりも明らかだし、実際に何度も間違われている。
ただ、だからと言って男の子らしい服を着せても、きっとあの子には似合わないと思う。
中性的を超えた、女の子寄りであるショタっ娘だからこその服の着こなし方があるわけで、そういう意味では、今のミオのファッションセンスは絶妙なのである。
目下の問題は、その女の子寄りの色気に免疫が無い俺には、あのショートパンツは刺激が強すぎるという事だな。
でも、来たる夏祭りの日に着せる予定の浴衣なら、そんな刺激でドキドキする心配もない。
ミオはいつもの服装でもいいと言ったのだが、せっかくの機会だし、とびっきりのおめかしをさせてあげたいと思ったのだ。
という事で、今日は隣町の駅前にあるデパートまで浴衣を買いに行く事に決まったのであった。
さて。ミオが着替えている間に、チャッチャと顔を洗って飯の用意をしなくては。
*
「おはようございます! 今日は七月最後の日曜日です。暑い日が続いていますが、皆さん、夏バテにはくれぐれもご注意くださいね! それでは本日の天気を――」
時刻は朝の七時半。
俺はテレビから流れる情報番組をBGM代わりにしながら、朝食のおかずである目玉焼きを作る。
そっか、七月も今日で終わりなんだ。
およそ半月後には盆休みが訪れるって考えると、月日の経過を早く感じる。
いつだったか、お袋に「二十歳を超えると早い」って教えられた記憶があるけど、ほんとにその通りだな。
俺がまだ小さかった時は、一日が長く感じられて、毎日すごく充実していたものだが、今のミオもそうなんだろうか。
俺に再会するまで辛い日々を送って来たであろうミオには、この夏、楽しい思い出をたくさん作ってあげたいよなぁ。
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