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35.夏祭りに備えて(7)
「とにかくだな。ショーツってのは、そんなに軽々しく見せるもんじゃないの」
「お兄ちゃんだけでもダメ?」
「うっ。ダ、ダメとは言わないけど」
こんなシチュエーションですら、ミオに厳しくなれない自分の甘さが出てしまう。
普段から、叱るところが全く無いほどのいい子ちゃんであるミオなだけに、余計に何を戒 めているのか分からなくなってくるのだ。
「ねぇお兄ちゃん。ボク、お兄ちゃんの彼女だよ。大好きな人になら見せてもいいでしょ?」
「ミオ……」
極めつけである愛の言葉にメロメロになってしまった俺は、もはやノックアウト寸前だ。
ミオにおねだりされ、根負けして結婚すると約束したあの時から、ミオは我が子であると同時に、俺の彼女にもなった。
その彼女であるミオがショーツを見せてくれるのは、恋人同士のコミュニケーションなのだから、何ら不自然ではないと言いたいのだろう。
その理屈は確かに正しいが、何しろ、俺とミオでは、十七もの年の差がある。
三十路が見えてきた俺に対して、ミオはまだ十歳になって間もない小学生なのだ。
そんないたいけなショタっ娘が、いかに彼氏彼女の関係だからといって、下着姿をホイホイと見せるのは、やはり健全ではないと俺は思うのである。
……もっとも、ミオと一緒に風呂に入るようになってからというもの、毎回脱衣所で下着姿を見るようになったわけで今更な話ではあるのだが、あれは不可抗力だから。
と、自分に言い聞かせて、俺はミオの申し出をなだめすかし、そしてやんわりと断り、何とかその場は事なきを得た。
やれやれ。ミオが俺に恋してくれるのは嬉しいけど、ここまでショーツを見せる事に抵抗が無いと、かえってこっちが赤面してしまうよ。
ミオが学校で性教育を学んで、少しは恥じらいというものを覚えてくれれば、俺もここまでタジタジにならなくて済むんだけどな。
「さ、ご飯食べちゃおう。もうすぐプリティクッキーが始まるよ」
「はーい。お兄ちゃん、今日も一緒に見ようね」
「ははは、仕方ないなぁ」
なんて余裕をかましてはいるが、何を隠そう、俺も日曜日の朝アニメ、『魔法少女プリティクッキー』のファンなのである。
もっとも、俺がハマったのは、アニメを知らなかったミオと一緒に見るようになってからなのだが、とにかく最近の子供向けアニメは、大人でも楽しめるような出来なのだ。
……さすがに、会社の人にはファンだとは公言できないけど。
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