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36.初めてのデパート(12)
「えっと。この子に合う浴衣を探してるんですけど、売り場は何階にありますか?」
「お嬢様の浴衣をお求めですね。ただ今照会いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか?」
「はい、お願いします」
「お嬢……」
俺の隣でお姉さんとのやり取りを聞いていたミオが、お嬢様というフレーズを耳にした途端、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をする。
「ミオ? 大丈夫か?」
「ねぇお兄ちゃん。ボク、また女の子に間違えられたの?」
「まぁ、そうみたいだね。何たって『お嬢様』だから」
それどころか受付のお姉さんは、俺の事もミオのお父さんだと勘違いしているフシがあるんだが、さすがにそれは口に出さないでおいた。
「お兄ちゃん。ボク、そんなに女の子に見える?」
「そうだなぁ。いつも一緒にいる俺が言うのも何だけど、見えるっちゃあ見えるよな」
「どんなとこが?」
「ミオが今着てる服は、女の子用でもあるだろ? だから間違えやすいんだよ。それから……」
「ん? それから?」
「一番は、顔も仕草も、全部がかわいいとこかな」
目を合わせ、ショタっ娘ならではのキュートさを率直に伝えると、ミオの頬がみるみるうちに紅潮していった。
「もー、お兄ちゃん! 恥ずかしいよぉ」
「ははは、ごめんごめん。でも、ほんとにかわいいって思ってるからさ」
「そうなの?」
「うん。いつも思ってる。ミオはかわいいって言われるの、嫌?」
「んーん、嫌じゃない……よ」
ミオはそう言うと、俺の腕にしがみつき、紅く染まった頬を隠すかのように顔をうずめてきた。
くぅー、たまらん。こういう恥じらいのリアクションがまたかわいいんだよなぁ。
今のミオは男女どちらかと言うと、顔や声や体つき、そして仕草までもが女の子寄りだ。
くっきりとした二重まぶたに長いまつ毛、大きな瞳が特徴的なミオの顔。
そんな超が付くほどの美形に加え、丈の短いショートパンツから伸びるこの脚線美が、ミオの中にある女性らしさを、より一層強調しているのである。
かような見た目だからこそ、初めて会った人には女の子と間違えられやすいわけだが、俺はそれでもいいと思っている。
常に自然体でいるからこそ、キュートなショタっ娘としての魅力を発揮しているわけで、無理に男っぽさを出そうとしたところで、きっとミオには似合わないだろう。
「お待たせいたしました。お子様向けの浴衣は、六階、子供服売り場の『キッズ・ヴィドール』にて取り扱っております」
「六階ですね。えーと、キッズ……」
「こちらが六階のフロアガイドになります。どうぞお持ちくださいませ」
インフォメーションのお姉さんは、先ほど浴衣を売っている店を赤く色付けて強調した、フロアガイドのペーパーを印刷して渡してくれた。
これだけ分かりやすい案内図があれば、まず店探しで苦労する事はないだろう。
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