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36.初めてのデパート(15)

 店内すぐのベビー服置き場を通り抜けると、お次は女の子用の夏服や水着などが並ぶ、ガールズウェアのコーナーに差し掛かる。  今は真夏だから水着が置いてあるのは分かるんだけど、まだミオくらいの歳の子が、いきなりセパレート型の代名詞であるビキニなんて着るものなのかねぇ。  ちょっとおませ過ぎやしないか。  こういう際どいビキニを、うちの子猫ちゃんに着せてみたらどうなるんだろう?  顔はもちろんのこと、体つきも女の子とさほど違いがないから、案外似合ったりして。  ……いやいや、いかん。そんな事をしたら、ただでさえかわいいミオに、より悪い虫が寄ってくるおそれがある。  ミオは俺だけの恋人なんだから、誰にも渡したりはしない。よってこの妄想は撤回。 「あ! ねぇお兄ちゃん」 「え。な、何?」  まずい。もしかして、女の子用水着をまじまじと見つめていたのがバレてしまったか? 「あのショーツ、すっごくかわいいよー」 「ショ、ショーツ?」  ミオが指差した先には、タンクトップを着せ、淡い緑色のショーツを穿かせてある、女児体型のマネキンがお色気ポーズを取っていた。 「ほらほら見てー、ここ。ウサちゃんが描いてあるの」 「あ、お尻じゃなくて前の方?」 「うん。このウサちゃん、お家にいるウサちゃんと耳が一緒なんだよ」  なるほど、このショーツの片隅にプリントされたイラストのウサギは、我が家でお留守番中であるロップイヤーのぬいぐるみと同じ形状の耳をしている。  我が家のウサちゃんを本物のペットのように可愛がっているミオだからこそ、こういうデザインのショーツが真っ先に目に止まったのだろう。  このウサちゃんショーツ、いつもミオが穿いているような、刺激の強いショーツよりも露出は控えめだし、何よりミオがお気に入りのようだから――。 「ミオ、これ買ってあげよっか?」 「え! いいの!?」  普段は控えめで遠慮がちなミオが、いつになく興奮した様子を見せる。  そんな反応から察するに、どうやらミオは、ウサちゃんショーツが目に入った瞬間、一目惚れをしちゃったようだ。 「もちろんOKだよ。ミオはいつもいい子にしてるから、ご褒美に買ってあげるね」 「ありがとう、お兄ちゃん!」  大好きなウサちゃんのショーツを穿けるようになるのがよほど嬉しいのか、ミオは大喜びで俺に抱きついてきた。  ミオが欲しいと思ったショーツはやっぱり女の子用だったわけだが、この子が下着選びをする時は、まず、それがかわいいかどうかを熟慮する。  つまり、ミオにとって〝性別の違い〟という基準は二の次、三の次にも入らないわけで、その結果として、女の子向けのショーツが集まっていくのである。

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