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36.初めてのデパート(16)
それらをごく普通に、何ら違和感を抱くこと無く穿きこなせているショタっ娘のミオだからこそ、こういったチョイスが許されるんだと思う。
仮にいい年をしたおじさんがこれを穿きたがるか、あるいはすでに穿いていたら、まずドン引きされるだろうから。
という事で、俺たちはすぐ近くで品出しをしている店員さんに声をかけ、マネキンが穿いているウサちゃんショーツを取り寄せてもらった。
そのついでに浴衣の在り処を尋ねたところ、店員さんいわく、ちょうど夏祭りフェアを開催中なので、今がお買い得だとの事だ。
思いつきと勢いだけで、今日を選んでデパートにやって来たのだが、どうやら運も良かったらしい。
店員さんの案内でやって来た浴衣の展示コーナーでは、色とりどりで華やかな男女の子供用浴衣が並べられており、そのラインナップの豊富さに圧倒された俺たちは、思わず驚嘆の声をあげる。
「わぁー、これが浴衣なんだ! かわいいのがいっぱいあるねー」
「そうだなぁ。どれもこれもミオに似合いそうなデザインだから、目移りしちゃうよ」
「ねぇお兄ちゃん。こっちの浴衣って女の子用かな?」
ミオが指差した先でポーズを決めた、子供のマネキンが着ている浴衣は、丈がヒザ上までしか無い、いわゆる〝浴衣ドレス〟というものだった。
浴衣をドレス化するのもそうだが、裾の部分にヒラヒラとしたフリルを付けてドレスアップしちゃう発想が、もう俺の理解を超えている。
そりゃあ無理もないよ。俺がまだ子供の頃は、こんな奇抜なデザインの浴衣を着た女の子なんて見かけなかったんだから。
「それは女の子が着るタイプのやつだね。浴衣の下の部分が、スカートみたいになってるだろ?」
「うん。そだね」
「あ、でも何と言うか。ミオならこういうのを着ても似合いそうだよな」
「ほんとにー?」
浴衣ドレスをまじまじと見ていたミオは、俺の発言を受けて、困ったような、あるいはどこか悩ましげなような、そんな複雑な表情を見せる。
かわいいもの好きなミオだからこそ、こういう浴衣ドレスすらも着こなしそうな気がしての感想だったわけだが、当の本人には、イマイチ刺さらなかったようだ。
「んー。確かにかわいいんだけど、色が合わないかなぁ」
「色?」
「ほら、ボクの髪って青いでしょ? 青色と、この浴衣ドレスのピンクって……何だっけ。デスマッチ?」
「え! デスマッチ!?」
格闘技に最も縁遠いショタっ娘の口から、いきなり突拍子もないフレーズが飛び出すもんだから、俺は思わず目を丸くしてしまった。
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