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36.初めてのデパート(17)

「そう。何だか釣り合ってないのを英語で言ってみたの」 「あ、ああ。そういう事か。ミオ、そんな時は〝ミスマッチ〟って言うんだよ」 「デスマッチじゃないの?」 「その言葉、どこで覚えたんだい? デスマッチだとプロレスの試合になっちゃうぞ」 「えー、違うんだ? あはは、おかしな覚え方するとこだったよー」  ミオは照れ笑いをしながら両手で頬を隠し、そのまま首を左右にフリフリさせる。どうやら、天然が出てしまった事を恥じらっているらしい。  ショタっ娘ならではの、愛らしいリアクションを見られてほっこりしたのは良いとして、この場で俺が指摘しなかったら、きっとこの子は、あらゆる場面でデスマッチという単語を使い続けたんだろうなぁ。  そう考えるとヒヤヒヤするな。  今後も横文字を苦手とするミオが公衆の面前で恥をかかないよう、ミオの保護者であり、同時に彼氏でもある俺が、しっかりとサポートしてあげなくては。 「でも、青とピンクってそんなに釣り合わないかな? ミオ、ショーツは普通にピンク色の穿くだろ」 「うーん、何て言うのかな。ショーツはいいんだけど、この浴衣ってピンクが多いじゃない?」  ミオが首をひねりながら答える。  おそらく、何がミスマッチなのか説明できる適切な言葉を、自分の頭の中の引き出しから探っているのだろう。  確かにミオの言う通り、この浴衣ドレスはピンク色の主張が強い。  ピンクを基調としているからそういう色合いになるのは当然として、浴衣に描かれている模様の色付けにまでピンクを用いているのは、少しばかりような気がしなくもないわけだ。  ミオはたぶん、自分が持っている天性の勘でもって、そんなくどいピンクと自分の髪色である、爽やかなブルーが合わないと察知したのではないか。 「ねね。お兄ちゃんはどう思う?」 「え。俺?」 「うん。色の事聞かせてー」  ミオのお願いを受けた俺は少し距離を取り、マネキンが着ている浴衣ドレスとミオを見比べてみる事にした。  デザイン自体はすごくかわいいから、ショタっ娘のミオにもおあつらえ向きだと思うんだけど、肝心の色合いはと言うと、やはり濃いピンクの主張が強すぎるかな。 「なるほど。ミオの言う事、よく分かったよ」 「でしょ?」  具体的な意見を述べるのは控えたが、ミオが普段から穿いているショーツは淡いピンクだし、そもそも布面積が違いすぎるため、比較対象にしてはいけなかったのだ。  このドレスの裾からミオの生足を拝めないのは残念だけど、合わないものは合わないのだから仕方ない。  他の浴衣、あるいは浴衣ドレスを探そう。

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