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37.デパートを満喫しよう!(13)
「そうだよ、俺の子供。ミオっていう名前なんだ」
「ふぅん、ミオちゃんって言うんだ。あたしは恵村理穂 だよ。よろしくね!」
「よろしく……お願いします」
まずい! さっきまでとは打って変わって、ミオの声のトーンが低くなってしまっている。
今のミオは、自分が女の子だと間違われるのには慣れたので、その件であからさまに不機嫌そうな声色になる事は無い。
おそらく、俺とのデートに邪魔が入っただけでなく、その相手が見知らぬ女性だったため、ライバル心を抱いているのだろう。
楽しい食事の時間に割って入って来た謎の人物が、自分の事に気付かなかったと言い放ち、さらに「そこにいる子」扱いされて、挙げ句の果てには馴れ馴れしく声をかけてくるんだものな。
俺のお嫁さんになりたいと言ってはばからない、ミオの立場になって考えればよく分かる。そりゃあ機嫌を損ねても仕方ないよ。
前に会っていた時もそうだが、理穂さんは、たまに「無神経か?」と思うようなところがある。今回も、その良くない一面がモロに出てしまったのだろう。
で、今の俺は、現在の恋人であるショタっ娘ミオと、数年ぶりに再会した理穂さんとの板挟みに遭っているので、ものすごく居心地が悪い。
気まずいというよりは、堂々と、ミオの事を自分の彼女だと紹介できないのが、もどかしくて仕方ないのである。
ただでさえ四階で佐藤に出くわしているというのに、今度は理穂さんに見つかるなんて、今日はほんとにタイミングが悪いな。
もっとも、それだけここは人が集まりやすいデパートだって事なんだろうけど。
しかも今日は日曜日だし。
出会ったものは仕方ないとして、今はこの場をどうやり過ごすか、そっちに全力を注ぐべきだろう。昔のつれなかった女性よりも、俺の恋人であるショタっ娘を守るために。
「理穂さん。今日はうちのミオと――」
「そういや柚月くんさ、前あたしに告白したよね。その時にはもう子供がいたって事?」
やめてくれよ! だから、どうしてその話を今するんだ。
「コクハク……」
ほら言わんこっちゃない。案の定、ミオが告白というフレーズに反応したじゃないか。
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