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37.デパートを満喫しよう!(14)

 これでまた俺は浮気を疑われ、針のむしろに座らされるような思いをするのが決まったようなもんだ。  とは言え、理穂さんは、俺がミオと再会するまでの時系列を知らないのも無理もない話だ。そこについては、きっちりと説明する必要があるだろう。 「違うよ。俺は今年、ミオの養育里親になったんだ」 「えー、里親になったの!?」  よほど意外な答えだったのか、理穂さんは驚いたような表情を見せる。 「そ、そんなにビックリするような事かな」 「そりゃビックリするよ。そうなったのって結局、あたしが柚月くんをフッたからって事でしょ?」 「フッた!?」  突然、ミオが周りに聞こえそうなくらいの大声を上げた。  横文字や難しい言い回しを苦手とするミオだが、こと魚や、恋愛に関する用語には敏感なので、「フッた」という言葉が何を意味するのかは当然分かる。  確かに、あの時の告白が成功して、後に理穂さんと結ばれていれば、俺はミオを我が家に迎え入れる事は無かったかも知れない。  だが、それはあくまでも可能性の域を出ない話である。  そんな「もしも」の話を本人の前で堂々とするのは、あまりにも配慮に欠けた行為ではないのか。  理穂さんは美人だし、明け透けな性格が人気だから男たちにモテるんだろうけど、玉に(きず)なのは、誰に対しても無神経で言動に気遣いがないところなんだよな。  そんな人にフラれた俺が思うのも何だが、今日はミオとの特別な日なんだから、もうちょっと空気を読んでくれないものかねぇ。  ……いや、ただ思うだけじゃダメだ!  言葉足らずで伝わっていない部分も含めて、俺がハッキリ言わないと。 「あの。そういう事じゃなくてさ」 「いやー。あたしが柚月くんをフッて、何か悪い事しちゃった感じだねぇ」  ダメだ、俺の声が全然耳に届いていない。  ところで何に罪悪感を覚えているのか分からないのだが、今の言葉を解釈するならば、ミオを我が家へ迎え入れたのは、俺が理穂さんにフラれて自棄になったがゆえの行為だとでも言いたいのだろうか。  だとしたらとんでもない言いがかりだぞ。  とにかくこれ以上、一方的に話を続けられて、おかしな設定をでっち上げられると、ミオが傷付くおそれがある。  そんな事態だけは、何としても避けなくてはならない。

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