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37.デパートを満喫しよう!(16)
「あれ? りほさん、お店から出て行っちゃったよ。どうしたんだろ」
食事に集中しながらも、二人のやり取りに耳をそばだてていたミオは、理穂さんの突然な心変わりに驚いた様子を見せる。
「不思議だねぇ。たぶん急用でも思い出したんじゃないか?」
慌てて店を出た、無神経な理穂さんの心理を適当に考察した俺は、若干冷めた味噌カツを口へ運んだ。
うちの純真無垢なショタっ娘ちゃんが、大人の薄汚れたやり取りに毒されるのは忍びない。だからこそ、俺はミオの知らない横文字を使い、早々に理穂さんを追い払ったのである。
「ええー? でも、ここは先にお金を払うお店なんでしょ。外に出ちゃっても大丈夫なのかな」
やっぱりミオは優しいなぁ。
さっきまで、自分を散々ないがしろにしていた相手の事を気遣えるんだから。
「食券さえ持ってりゃ平気だよ。そんな事よりごめんなミオ、嫌な気分にさせちゃって」
「んーん、いいの。でもあの人……お兄ちゃんを『フッた』って言ってたよね」
「うん、そうだな。もうずいぶん前の話さ」
「じゃあ、あの人がお兄ちゃんの元彼女さんだったの?」
と、ミオは若干声を潜めつつ尋ねてくる。
その不安げな表情から質問の意図を汲み取るならば、あの女性と付き合っていて疲れなかったのか? といったところだろうか。
そりゃあドッと疲れただろうね、もし告白が成功してたら。
「さっきの人は元カノじゃないよ。俺がまだ新入社員だったころに告白して、『お友達でいましょう』ってフラれただけの間柄さ」
「あの人がそうなんだ? ものすごく親しそうに、お兄ちゃんに話しかけてたから、付き合ってたのかと思っちゃった」
「一応、フラれる前に二人で出かけたりした事は何回かあるから、向こうとしては、気心の知れた仲だと思ったんじゃないかな」
「きごころ……」
また俺が難しい言葉を使ってしまったせいか、ミオは箸を止め、まぶたを閉じ、首を傾げて考え込む。
「まぁ、とにかくだ。もうずっと会ってないし、連絡も取っていなかったから、理穂さんとは何でもないんだよ」
「良かった! 確かに、お兄ちゃんを『フッた』って言う人とは付き合えないもんねー」
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