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37.デパートを満喫しよう!(22)
「それにしても、だいぶゆっくり回る観覧車だな」
「そうなの?」
「今まで乗ってきた奴に比べてだけどね。小型だから、じっくり楽しめるように作ってあるのかも」
「お兄ちゃん、他の観覧車に乗った事あるんだ?」
「あるけど……」
とまで言って、ひょっとして俺はヤブヘビになるような事を口走ってしまったのでは? という、妙な予感に襲われた。
「ふーん。あるんだ、お兄ちゃん」
どうやら、その予感は的中したようだ。ミオは窓から顔を離すと、ジト目で俺を見つめてくる。
「な、何だよー」
「ねぇ。誰と乗ったの?」
「誰とって、そりゃあうちのお袋とだよ。俺が子供の時の話さ」
という、当たり障りのない説明で納得するはずもなく、ミオはさらに疑惑を追及してくる。
「お兄ちゃん、さっき『今まで乗ってきた奴』って言ってたよね。それって何回も乗ってるって事でしょ」
「う。そうだけど」
「その観覧車、全部お母さんと乗ったの?」
という問いに対し、俺は思わず答えに窮してしまった。さすが、うちのショタっ娘ちゃんは鋭いところを突いてくる。
「おーにーいーちゃーん?」
「わー、分かった分かった!」
俺は身を乗り出して質問攻めしてくるミオを両手で制し、対面の席に座り直させた。
「やれやれ、ミオには敵わないなぁ。確かにお袋とだけじゃないよ。大人になってから、元カノと一度だけ乗った事があるんだ」
「元カノさんって、お兄ちゃんにひどいことを言ってたって人?」
「そうだよ、その人。念のために言っとくけど、女の子と観覧車に乗ったのは、あの時だけだからね」
話を聞いていたミオは何かを察したのか、俺を見る目が疑いのものから、哀れみの込もった眼差しへと変わっていく。
「ミオも何となく分かってるみたいだから詳しい話は省くけど、あの時、俺の方を見て、これだけ言われたよ。『バカと煙は高いところが好きよね』ってさ」
「ええ……。ねぇお兄ちゃん。前にも聞いたけど、元カノさんって、ほんとにお兄ちゃんが好きだったの?」
「今となっては分からないな。まぁ一つハッキリしているのは、俺が持ってるお金は好きだったって事だね」
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