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37.デパートを満喫しよう!(25)
「お兄ちゃんお兄ちゃん。空がこんなに近くまで来てるよー」
緑溢れる高山から、抜けるような青空へ興味が移ったショタっ娘ちゃんは、ゴンドラの窓に両手をつき、ふわふわと浮かんでいるわた雲を目で追っている。
あたかも雲が掴めるかのような錯覚を起こすのも、高所へ上れる観覧車ならではだよな。
最初は怖がって泣き出さないかと心配だったが、思いのほか楽しんでくれて、ほんとに良かった。
「そうだミオ、こっち向いて。空と一緒に写真撮るよー」
「はーい。撮って撮ってぇ」
俺はスマートフォンを取り出し、おもちゃの箱を抱いて微笑むミオの姿と、一面に晴れわたる空をフレームに収める。
「ね。今度はお兄ちゃんも一緒に撮ろ?」
「え? でも座席が狭いから、並んで撮るのは難しくないかな」
「ボクがそっちに行くー」
観覧車が下りに差し掛かり始めたころ。ミオは席を立ち、窓を背にして、戸惑う俺の横顔に頬をくっつけてきた。
そのスベスベで柔らかい頬の感触を食べ物にて例えるならば、マシュマロあたりが最も近いかも知れない。
ミオにそんな気は無かったのだろうが、俺の顔の角度がもう少しずれていたら、うっかりキスしてしまうところだったんじゃないか?
そんな、もしものハプニングを勝手に頭の中で思い描き、ミオの事を意識しすぎた俺の胸は、否が応でも高鳴りが激しくなっていく。
これほどの胸のときめき、理穂さんや元カノと一緒にいた時ですら抱かなかったというのに、俺は一体どうしてしまったんだろう。
これがショタコンの持つ本能というものなのか。
「えへへ、お兄ちゃんのお顔にくっついちゃった」
「ミミ、ミオ。さすがにちょっと、この距離は……」
「ね。これなら一緒に撮れるでしょ?」
「あ、ああ。そうだね。んじゃあ撮ろっか」
「うん!」
俺は胸のドキドキを悟られないよう平静を装い、スマートフォンのインカメラにて、頬を寄せた二人の笑顔を写真に残した。
この写真は、間違いなく俺たちの宝物になる一枚なんだけど、ちょっと照れ臭いし、佐藤の奴にイジられるのも面倒だから、会社のデスクには飾れないかな。
浮気を疑われたり、口づけしそうなくらい急接近したりと色々あったが、初めての観覧車体験でいい思い出作りができて、心底ホッとしたよ。
次に乗る予定のパンダさんも、ミオに喜んでもらえるといいんだけどな。
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