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39.初めてのペットショップ(8)
「ミオ。それはね、レトリバーって言うんだよ」
「えー? そうなの?」
「うん。レトリバーを日本語に意訳すると『回収する者』とか『取り戻す者』って意味で、ゴールデンは毛の色の事を言ってるんだね」
「毛の色がゴールデンって何?」
ミオは顔をしかめながら、自分が知らない英単語の意味を尋ねてくる。
「ゴールデンってのは、簡単に言うと黄金色 だな。黄金色 って言った方が分かりやすいかもだけど」
「黄金って、キラキラしてるあの黄金?」
「そうだよ」
「じゃあ、日本語にしたら『黄金の取り戻す者』になるんだ。変な名前ー」
「う……そうは言うけどだな。あくまで直訳すると、そんな感じの名前になるんだよ。あと、レトリバーね。念のために」
「分かったよー。でも、トリレバーの方が呼びやすくない?」
「まぁ、俺たち日本人には馴染みのある名前だからね。鶏レバーって」
「でしょ? トリレバーの方が言い間違いしなさそうだもん」
「何たって美味しいしな。鶏レバー」
「うん」
さっきから鶏レバーの話ばかりしてたら、何だか無性に鶏レバーが食いたくなってきたな。
ここを出て地下のグルメフロアに寄ったら、鶏レバーのおかずでも買って帰るか。
「とにかく。そのワンちゃんが吠えなかったのは、ゴールデン・レトリバーならではの穏やかな性格だからだろうね」
「よかった。ボク、大きい音とか声は苦手だから、吠えないワンちゃんは好きなんだー」
「それは俺も同感だよ。犬はまぁ仕方ないとして、人間が騒がしいのはちょっとな」
「だよね。あの時ナデナデしたのが、おとなしい子で良かったぁ」
「尻尾、フリフリしてた?」
「うん! こんな感じー」
ミオはそう言うと、ニコニコしながら、自分に尻尾が付いている……という仮定でもって、ショートパンツから溢れんばかりのお尻を左右に振ってみせた。
なんと艶めかしい、いや違う。ここはそういう感想を抱く場面ではない。
その愛らしい腰つきのおかげで、俺にもミオの臀部あたりに、ゴールデン・レトリバー特有のフサフサな尻尾が見えたような気がする。
素でこれなんだから、ミオがコスプレ用の犬、あるいは猫の耳と尻尾を付けてくれたら、もっとかわいくなると思うんだよなぁ。
ミオはどっちかというと猫系だから、子猫ちゃんセットの方がお似合いかな。
そして、その子猫ちゃんセットで変身したミオに、猫語で甘えさせるのだ。実に理想的なプランではないか。
アカン、妄想するだけで顔がニヤけてきた。
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