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39.初めてのペットショップ(9)
「このお店って、ワンちゃん猫ちゃん以外にもいるのかな?」
「いるんじゃないか?」
と答えるだけでは無責任なので、俺は首を伸ばし、ケージの向こう側を覗いてみる。
「ああ、見えたぞ。あっちの方には、ハムスターがいるみたいだよ」
「そうなんだ。ハムスター、かわいいよね」
「回し車を一生懸命走るところとかな」
「うんうん、手のひらに乗るくらいちっちゃくてかわいいんだぁ。…………だけど」
「ミオ……」
突如として眉尻を下げ、言い淀んでしまったミオの心情を推し量るに、たぶん犬猫に比べて寿命の短いハムスターが天に召され、ペットロス症候群に陥った時の事を考えているのだろう。
あるいは、俺と再会するまでの施設での生活で、すでに似たような経験をしているのかも知れない。
うちのミオは、生みの親に捨て子にされたという過去がある。そこへ来て、ペットにまで先に逝かれてしまったら、落ち込む、悲しむどころでは済まないのではないか。
ペットを取り扱うお店の人や、ペットロスを経験した事のある人は、寿命が短いからこそ、生きている間にたくさん愛情を注いであげて欲しいと言う。
ただ、可愛がれば可愛がるほど、ペットとお別れする時の辛さや悲しみが大きくなるのもまた事実。だから、生き物を飼う時は責任だけではなく、覚悟をも持たなくてはならない。
ミオはおそらく、その事を身を以 て知っているのだろう。でなければ、ここまで切なそうな顔をしたりはしないはずだ。
だからと言って、ペットを飼う事に否定的な感情を持っているわけではないのは、鈍い俺でもさすがに分かる。
とにかく、これ以上、ハムスターに関する話を広げるのは止めよう。
それが最善の手段なのかどうかは分からないけれど、ミオが負っている心の傷を抉 ったり、増やしたりしたくない……という思いが強く出た結果がこれだった。
「ミオ。そろそろ行こっか?」
「うん。ごめんねお兄ちゃん」
「いいんだよ。謝らなくたって」
俺は、下を向いたミオの頭を、励ますようにポンポンする。
家に帰ったら、お留守番してるウサちゃんのぬいぐるみを、二人でいっぱい可愛がろうな。
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