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39.初めてのペットショップ(10)
「さ。まだ明るいうちに、今日の晩飯のおかずを買って帰ろうか」
「あ! ちょっと待って、お兄ちゃん」
「ん? もしかして、まだ遊びたいとこあった?」
「えっと、そうじゃないの。お兄ちゃんが一階で浴衣売ってるとこ聞いた時、大人用の浴衣を買えるところも教えてもらってたでしょ?」
「ああ、そういや聞いてたね。たしか七階だったような」
さすがの記憶力だ。ミオに言われるまで、その事をすっかり忘れてたなぁ。
何しろ今日は、佐藤やら里穂さんやら、アクの強い人たちに出くわしたもんで、自分用の浴衣も買おうか検討していた事が、頭からすっかり飛んでしまっていたのだ。
「あれって、お兄ちゃんの浴衣も買うつもりだったんだよね」
「うん。似合うかどうか分かんないけど、一応見ておこうかって思ってさ」
「じゃあ、おかずを買う前に、そっちに寄ってこ?」
「いいのかい? ミオ、疲れてない?」
「大丈夫ー!」
ミオは元気よく答えると、俺の腕にぎゅーっと抱きついてきた。
今日はいろんなところへ連れ回したから、疲労が溜まっていないかと心配していたんだが、この様子だと、まだまだ体力は有り余っていそうだ。
「ボク、今度のお祭りは、お兄ちゃんと一緒に浴衣を着て行きたいの」
「ミオ……」
「……わがままかな?」
「そ、そんな事ないよ!」
俺の腕を愛おしげに抱くミオが、顔色を伺うかのように見上げてきたので、俺は「わがまま」という言葉を即座に打ち消す。
わがままだなんて、とんでもない。俺とお揃いでお祭りへ出かけたいって言ってくれるのは、むしろ嬉しい事なんだ。
恋人同士なら、さすがにペアルックとまでは言わなくても、好きな人と衣服を合わせたい、と思うのは至極当たり前だろう。
残念ながら元カノはそういう人じゃあなかったけど、現カノのミオは考え方が違うからね。
という事なので、俺たちは七階の催し物会場まで足を運び、大人用の浴衣や履物やらを買い揃えてから、地下のグルメフロアでおかずを買って家に帰ったのだった。
俺が着る浴衣はミオにも一緒に選んでもらい、今日の晩ご飯のおかずは、ペットショップで飛び出した単語から着想を得て、鶏レバーの煮物を真っ先に買った。
さあ、これで全ての準備は整ったし、後は一週間後の納涼祭を迎えるだけだ。
週間天気予報の小さな傘マークだけが気がかりだけど、何とか、土日のどちらかだけでも晴れてくれますように。
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