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40.夏祭りを控えて(4)

 俺もお祭りは少年時代以来の参加になるから、実を言うと内心ワクワクしている。  子供の頃はわずかな小銭を握りしめて、何を食べようか、何をして遊ぼうかを真剣に吟味したものだが、大人になった今は安定した収入があるからね。  気になったものは積極的に食べ、そして遊ぶ事で、小さい時に果たせなかった夢を叶えたいと考えているのだ。  そういう意味では、ミオよりも俺の方が、明日の納涼祭を待ち遠しくしているのかも知れない。  もっともこれが平日開催だったら、その足取りは重く、ろくに楽しめそうにない事が容易に想像できる。だからこそ、つくづく、土日休みの会社に勤めていて良かったと思うのである。 「ねぇお兄ちゃん。明日行く神社って――」 「何だい? 一応先に言っておくけど、あそこは縁結びの神社じゃないぞ」 「むー」  聞きたい事を言い当てられ、おまけにその答えが期待はずれだったからか、ミオは頬をぷうっと膨らませた。  うん、そういうところがすごくかわいい。  あえて口には出さなかったけど、恋みくじのお告げに頼らなくても、俺とミオの相性は最高だと信じてるから。     *  翌日の土曜日。  軽く夕飯を済ませた俺たちは、窓の外が暗くなってきたのを見計らい、出発の準備を始める。  準備と言っても、やる事は体に虫除けスプレーを振り、浴衣を羽織るだけなのだが、着付けの時点でちょっとした疑問が浮上したのは予想外だった。 「お兄ちゃん、浴衣の下にシャツって着てもいいの?」 「え? いいんじゃないか?」 「でも、シャツを着たらこうだよー」  と言って、ミオがシャツの上から浴衣を羽織ると、衿元(えりもと)から、丸首の白い布地が顔を見せる。 「なるほど、そういう事か」 「ね。何だかしっくりこないの」 「て事は、上は裸にしなきゃダメなのかな」 「んー、ボクはそれでも構わないけど……」  ミオは一旦、浴衣を折り畳んで脇へ置くと、着ていたシャツを脱ぎ始める。  普段から見慣れているミオの脱衣が、この時だけはやたら艶かしく映ったので、俺は反射的に目を逸らしてしまった。

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