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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(3)
「りんご飴ってのは、りんご丸ごと一個を飴でコーティングしたお菓子だよ。手が汚れないように、割り箸みたいな棒に刺して食べるんだけどさ」
「アメデコーティングって何?」
「いや、そこ繋げるんじゃなくて、飴だよ飴。簡単に言うと、甘ーい飴で包み込む感じかな」
「そんなお菓子があるんだぁ。ボク、初めて知ったよー」
まだ見ぬ未知のお菓子によほど興味を引かれたのか、ミオの目が輝きを増している。
あの透明度の高い飴で包み込んだ、真っ赤なりんごを見たら、子供たちは物珍しさのあまり、吸い込まれるようにお店へと立ち寄ってしまう事だろう。
もし食べきれないくらい大きかったら、フィルムに包んだままのやつを、みやげとして持ち帰るのもいいかもな。
「他にはどんなのを食べてたの?」
「そうだなぁ。定番なのはかき氷とかチョコバナナだろ。後は、お絵描きせんべいなんかもよく食べてたな」
「オエカキ……何?」
よほど頭に思い浮かべるのが難しい食べ物だったのか、お絵描きせんべいで引っかかったミオが、眉をしかめて聞き返してくる。
「お絵描きせんべいは、要はソースせんべいなんだよ。違いと言えば、かけるソースを選べるだけで」
「ふーん。でも、それがどうしてオエカキなの?」
「そうだなぁ。こういうのは、実際にやってみた方が分かりやすいんだけど……」
百聞は一見にしかず。俺はお絵描きせんべいがどういうものなのか、その目でもって理解してもらおうと、周囲を見回してみる。
なにぶん、俺の子供時代の話だから今でも存在するのか心配だったが、料理やゲームなどの名前が書かれた屋台の中から、何とか、それらしいせんべいを売っているお店を見つける事ができた。
店舗の名前こそ『イラストせんべい』に変わっていたものの、その本質は同じようである。
「ほら、こっちだよミオ。これがお絵描きせんべい」
「わぁー、大きなおせんべいだね! ボクの顔くらいありそうだよ」
市販されているソースせんべいとはまた違う、お祭りならではの規格で作られたせんべいを見て、ミオは驚きの声をあげる。
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