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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(4)
「はい、いらっしゃい! どれでも一枚二百円だよっ」
「え。こんなに大きくて二百円なんですか!?」
「そうだよお嬢ちゃん。好きなソースを使って、絵を描いて楽しんでいかないかい?」
「お嬢……」
せっかく男ものの浴衣を着てやって来たのに、それでも尚、女の子と間違えられたミオは、思わず言葉を失ってしまった。
「ミ、ミオ。せっかくだからお絵描きしていこう! 二種類のソースが選べるよ!」
「……え? 二種類?」
「そう。普通の甘辛いソースと、チョコソースから好きな方を使って、せんべいに絵を描けるんだ」
「あ! だから〝お絵描き〟せんべいなんだね」
しばらく放心状態だったミオは、俺の言葉が耳に届いた途端、瞬時にお絵描きせんべいの意味を理解したようである。
その様子から察するに、さっきのおじさんによる説明は、どうやら、「お嬢ちゃん」の一言で全て右から左へと流れてしまったらしい。
「いい機会だから実際にやってみよう。すみません、二枚くださーい」
「はいよ、毎度あり!」
俺たちは屋台のおじさんから、それぞれ透明なビニール袋に入ったせんべいを受け取り、ソースのボトルが置かれたテーブルへと向かう。
そこではすでに、先客の子供たちが思い思いの絵を描き、お互いに見せ合いっこしていた。
「よーし。俺は普通のソースでやるかなぁ」
「じゃあボクは、チョコソースでお絵描きするー」
ちなみにお絵描きのキャンバスとなるせんべいは、厚みこそ一円玉くらいしか無いものの、とにかく大判で、ほぼ円形を保っている。
この上に、好きなソースを好きなだけかけていいというのだから、なかなか太っ腹だと思う。
果たしてこのお店は利益が出ているのか? という心配が一瞬よぎりはしたが、これは余分な心配だな。そもそも商売として出店しているのだから、少なくとも、赤字になるような商売はしないだろう。
「さて、何を描こうかな?」
「ボクはお兄ちゃんを描くよー」
「お、いいね。それじゃあお互いの似顔絵を描いてみよっか」
「うん! 楽しみにしててね」
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