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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(5)

 ミオはチョコソースのボトルを逆さに持つと、せんべいよりも一回りほど小さい円を描きだした。おそらく、その円は俺の顔という事なのだろう。  よし、見てばかりいないで俺も描くか。  ボトルの先端から出てくる細いソースの線で、ショタっ娘ならではの美少女顔を表現するにはどうすればいいのか。  俺もあんまり図画工作や美術が得意な方じゃなかったからあれなんだけど、似顔絵は特徴を掴みさえすれば何とかなるから、別に写実的にする必要はないだろう。  それを踏まえた上で、まずはミオの目から取り掛かるとしよう。  似顔絵のコツはとにかく似せる事。ミオの象徴的な長さのまつ毛と、大きな瞳を強調するように描けば上手くいくはずだ。 「……あっ!」 「どしたの? お兄ちゃん」 「力加減を間違って、ソースがドバッと出ちまった」 「あはは。それってボクの目を描いてくれてたの?」 「そのつもりなんだけど、片目だけ大きくなってしまったなぁ。どう軌道修正すべきか」 「じゃあ、もう片方も、同じ大きさにすればいいんじゃない?」 「うん。バランスを取るなら、そうするのが一番良さそうだね」  とは言え、ソースが出すぎた方の目に合わせてもう片方の目を描くとなると、相当ソースを伸ばす事になるぞ。  こんな調子で、果たして俺は他の顔パーツを収められるんだろうか。 「ぬりぬりー」  目の段階で足踏みをしている俺の横では、ミオがニコニコしながら、チョコソースを巧みに操っている。  やっぱりこういうのは理屈で考えるよりも、無心になって楽しむのがいいんだろうなぁ。  よし。ミオの目は大きくなりすぎたものの、何とか修正できた。お次は鼻と口だな。  写実的にやるなら、俺の目から見て、ミオの鼻と口がどう映っているのかをそのまま描けばいい。  が、今やっているのはあくまで似顔絵だから、ここはアニメチックに小さくしてみよう。  イメージとしては、ミオと俺が毎週日曜日の朝に見ている『魔法少女プリティクッキー』の作画が近いかな。  うちのショタっ娘ちゃんは、女の子が憧れる魔法少女と肩を並べるくらいの美少年だから、タッチをアニメに寄せて描くとそれらしくなる。

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