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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(7)

「ボクも頑張ってお兄ちゃん描いたよー。見て見てぇ」  にこやかで、どこか自慢げなミオが、こちらに見えやすいよう配慮して、顔が描かれたせんべいを向けてくれる。  ……うん。画力は向上しているな。  少なくとも、以前図画工作の時間に描いた俺の肖像画よりも、頭の毛が三本多い。  どっちにしても頭皮がさみしい事には変わりないのだが、ボトルの先端から直に出てくるチョコソースを使った似顔絵にしては、なかなかいい出来だと思う。 「どう? お兄ちゃん」 「えっと、そうだな。とても上手く描けてると思うよ。特にその、何だね、元気いっぱいそうなところがハッキリと伝わりやすい感じで」 「ほんと? えへへ、良かったぁ。大好きなお兄ちゃんの顔だから、一生懸命描こうと思ってたんだよー」 「ありがとな、ミオ。嬉しいよ」  はぁー、キュンとするわ。こんな事言われて、嬉しくない彼氏がいるわけないじゃん。  何しろまだ十歳のショタっ娘ちゃんが、額にうっすら汗をにじませるほど、真剣に、俺の顔を描いてくれたんだから。  これはもう、芸術というより宝物なんだよ。 「なぁミオ。このおせんべい、食べる前に写真を撮っておこっか」 「うん。じゃあ、二枚並べて撮ろ?」 「並べて? 一枚ずつじゃなくていいのかい?」 「んと、その方が、おせんべいの中でも一緒にいられるかなって思って……」  そう言って、上目遣いで俺の顔色を窺うミオが、愛おしくてたまらなかった。  だから俺は、衝動的に、その小さな体を抱き寄せてしまっていたんだ。 「お兄……ちゃん?」 「あっ! ご、ごめん! つい……」 「ううん、いいの。ボク、お兄ちゃんに抱っこしてもらえて幸せだよ」  俺の腕の中で頬を寄せながら、そんな事を言われたら、より一層、強く抱きしめたくなっちゃうよなぁ。  さっきから、俺の中の胸キュンメーターがレッドゾーンまで振り切ってしまって、一向に戻る気配がない。  柚月義弘、(よわい)二十七にして、ようやく悟ったような気がする。これこそが、恋人とイチャつくって事なんだろうな。  これがあの元カノだったら、「くっつかないでよ。ただでさえ暑苦しいんだから」と突き放されていたに違いない。  俺の彼女がミオでほんとに良かった。

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