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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(15)

「で、シャンメリーだけど。できれば、何かの記念日に開けるのがいいかな。それも、とびっきりロマンチックな時にさ」 「ロマンチック……?」  ミオはお絵描きせんべいをかじりながら、俺が言い放った横文字の意味を、首を傾げて考え込みだした。  かくいう俺も簡単にロマンチックって単語を使ってるけど、実際にどういうシチュエーションがロマンチックなのかは、ふわっとした印象しか持っていないんだよな。 「あっ、分かった!」 「ん?」 「それって、ボクたちの結婚式の事だよね」 「ブハッ」  突如として目を輝かせたミオの口から、予想だにしない言葉が飛び出したものだから、俺は飲みかけのラムネを思いっきり吹き出してしまった。 「ひゃっ! お兄ちゃん、大丈夫?」 「ご、ごめんごめん。びっくりして、ラムネが気管に入りかけちまった」  もっとも、ショタっ娘ちゃんが発した結婚式というフレーズに驚いたのは、どうやら俺だけではないらしい。  空き瓶をケースにしまっていたラムネ屋のおじさんが作業の手を止め、俺たちの事を、さも仰天したと言わんばかりの瞳で凝視してきたのだ。  当然、俺がその視線に気付かないはずがない。だが、ここはあえて話題を逸らしておこう。 「すみません。テーブルは何とか事なきを得たので……」 「あ。いや、いいんだよ。それよりも兄ちゃん、あんたも隅に置けないねぇ」 「え」 「別に盗み聞きするつもりはなかったんだけどよ。兄ちゃん、そこのお嬢ちゃんと結婚の約束してんだろ」 「お……おじょう……?」  これで何度目になるだろうか分からないが、またしても女の子と間違われたミオは、もう言葉にもならない様子だ。 「あの。うちのミオは」 「いいんだって。うちもさ、母ちゃんが俺っちに惚れた時も、ちょうど同じくらいの歳だったから、よく分かるんだよ」 「はぁ。……は?」  ちょっと待てよ。このおじさん、今、とんでもない事をサラッと口走ったんじゃないか。  もしかして、この人もロリコンだって話?  ただ、うちのミオは男の子だから、俺の場合はショタコンになるんだけれども。

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