388 / 833

41.ショタっ娘のお祭りデビュー(16)

「ねぇお兄ちゃん」 「ん? 何だい?」 「あのおじさん、お母さんに惚れられたの?」  いかん、話がややこしくなってきた!  シャンメリーを開けるのは特別な記念の日にしようって提案したら、ミオが俺との結婚式の日だと思い込んで、それを聞いていたラムネ屋のおじさんによるロリコン疑惑を、ミオがまさかのだと勘違いして、どれから処理すればいいのか分からない。  とりあえず、一番ヤバい問題から片付けていくか。 「ミオ。この場合の『母ちゃん』ってのはね、お母さんじゃなくて、お嫁さんの事を指しているんだよ」 「じゃあ、ほんとのお母さんだけじゃなくて、お嫁さんも『母ちゃん』って呼ぶって事? 変なのー」 「そ、そうだね。あは、あははは」  今の会話をおじさんが聞いてやしないかとハラハラして、引きつった笑いしか出てこなかった。  とりあえず、ミオの誤解を一つ減らす事ができたので、次の問題に移ろう。 「で、だ。シャンメリーの話だけど」 「うんうん」 「結婚式だったら相当先になっちゃうから、もっと身近な日に開けようと思うんだ」 「むぅー」  二人の結婚式がまだ先の話だと聞かされたミオは口を尖らせ、残念そうな顔をする。  言いたいことは分かるし、そりゃ、俺だってすぐにでもミオを(めと)ってあげたいけど、今の世間が絶対に許さないからなぁ。  俺の両親との顔合わせも済ませていないのに、いきなり「ミオと結婚します」って宣言しようものなら、たぶん卒倒されるだろうし。 「まぁまぁ、そんなにがっかりしないで。シャンメリーを開ける日は、きっと素晴らしい一日になるからさ。その時まで楽しみにしててよ」 「素晴らしい一日?」 「うん。細かいところが詰まってないから、まだ具体的には言えないんだけどさ。とにかく、それは俺が保証するよ」 「分かったよー。お兄ちゃんのお話、信じて待ってるね」  俺の答えにハッキリしない部分が多いから、もう少し突っ込んだ質問をされるかと思ったが、ミオは意外にも満足そうな様子で、よく冷えたラムネに口をつける。

ともだちにシェアしよう!