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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(18)

「やっぱりそうだよね。ずっと、何だか違うなーって思ってたんだぁ。おいしいからいいけど」 「はは」  タネ明かしをした事で、不満の一つや二つ出てくるかなと思っていたが、ミオはつとめて冷静だった。  あんまりお金の話をするのも何だから黙っていたが、二百円で売っているお祭り用のラムネに、本格的にそれぞれの果汁をプラスすると、手間がかかって仕方ないんだろう。  かたやメロン果汁、かたやパイン果汁というように、生産ラインによって配合する果物が異なると、一本あたりの単価も変えなきゃいけないし、それじゃあ一律の価格で売れないからね。  この手の飲み物は本来、味付けや香り付けよりも、主に色付けによって生み出された雰囲気、つまり果実っぽさを楽しむものなんだろう。  さすがに駄菓子屋なんかに置いてあった、全く炭酸が入っていない〝コーラ風飲料〟には残念な思いをしたものだが、ビー玉の動きを見る楽しみもあるラムネの方は、ミオにもおおむね好評のようだ。  今じゃ夏祭りの風物詩としての地位を確立したラムネだけど、ビー玉で栓をする技術といい、今日に至るまでの道のりはさぞや険しかったんだろうなぁ。  そう考えると頭が下がるな。  とまぁ、先人たちの苦労に思いを馳せるのはこの辺にしておいて、チャッチャと飲んで次へ遊びに行くとするか。 「ふーっ、うまかった。やっぱり、せんべいには飲み物がセットじゃないとな」 「そだね。ラムネも、お兄ちゃんも全部おいしかったよー」  その言葉と微笑みに一瞬ドキッとしたが、ミオは、チョコソースで俺の似顔絵を描いたおせんべいの事を指しているんだった。  今の会話を、あのラムネ屋のおじさんに聞かれていたら、また、あらぬ誤解を招いていた事だろう。  次なる面倒が起きないうちに、このお店はそそくさと出た方がいいような気がする。     * 「お祭りって、いろんなお店があるんだねー。ボク、こういうの初めてだから驚いちゃった」 「年に一度の納涼祭だからな。おいしいものを食べて飲んで、たくさん遊んでいって欲しいんだよ、きっと」 「食べる飲むは分かったけど、お祭りで遊ぶって、何して遊ぶの?」  俺の腕をぎゅっと抱いたミオが、首を傾げ、顔を見上げながら尋ねてくる。

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