391 / 833
41.ショタっ娘のお祭りデビュー(19)
「まぁ一言で表すと簡単なゲームなんだけど、その種類はいろいろあるよ。例えば金魚すくいだろ」
「金魚すくい? なぁにそれー」
すくう事になのか、あるいは金魚という品種に引っかかったのかは分からないが、いずれにせよ、ミオにとって金魚すくいは初耳だったようだ。
もっとも、今日が記念すべきお祭りデビューの日だから、知らないのも無理からぬ話ではあるが。
「えーとな。金魚すくいってのは……」
「あっ、もしかしてミオちゃんじゃない?」
「え?」
俺が金魚すくいの遊び方を説明しようとした途端、背後からミオの名を呼ぶ少女の声がした。
この声には聞き覚えがあるな。確か、髪が伸びてきたミオを、ヘアーサロンへと連れて行く最中に出会った――。
「やっぱりミオちゃんとお兄さんだぁ。やっほー」
「およ? この声は里香 ちゃんだよね?」
俺たちが後ろを振り向くと、フリル付きのかわいい浴衣ドレスに身を包んだ、ツインテールの女の子が手を振りながら、こちらへ駆け寄ってきた。
「そだよぉ。久しぶりだねっ」
ん? 久しぶり?
「ミオ。終業式の後、里香さんとは会ってなかったのかい?」
「うん。里香ちゃん家、夏休みになったらオーストラリアに『ろんぐすてい』するから、しばらく会えないって言ってたんだよ」
ロングステイ、つまりは長期滞在か。
そんな余裕があるって事は、ひょっとして里香さんの親族は、資産家か何かなのかねぇ。
「こんばんは、ミオちゃんのお兄さん!」
「やぁ、こんばんは。よく俺たちが分かったね」
「はい! ミオちゃんの髪の毛の色で、すぐ分かっちゃいましたぁ」
なるほど、そこに着目したか。
確かにミオの髪色はおそらく唯一の、遠くからでも目立ちやすい爽やかなブルーなので、他人と間違える事はまず無いんだろうな。
「わー。里香ちゃん、フリフリでかわいい浴衣着てるー」
「ミオちゃんの浴衣も、お魚さんの絵がいっぱい描いてあるの、すっごくかわいいよぉ」
「えへへ。これ、お兄ちゃんにも一緒に選んでもらったんだー」
「いいなぁ。あたしのパパなんて、全然浴衣に興味がないんだよ。だからこないだ、ママと二人で買ってきたの」
「よく似合ってるよー。スカートっぽくて涼しそうだね」
「でしょ? でも、ちょっとだけ短いかなって思ってるんだぁ」
「それって、ショーツが見えちゃいそうだからってこと?」
「うん。ミオちゃんもショーツを見られないように気を付けなきゃだよ」
ともだちにシェアしよう!