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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(20)

 俺の目の前で、さもそれが普通であるかのように女子トークが繰り広げられているわけだが、うちのミオはショタっ娘であるとはいえ、れっきとした男の子なんだよなぁ。  ちょっと天然なところがあるミオ本人としては、たぶん女の子扱いされている自覚が無いんだろう。  もっとも、俺以外の奴がミオのショーツを覗き見る事はまかりならんから、至極まともな内容の会話ではあるんだけれども。 「里香ちゃんは今来たの?」 「んーん、ちょっと前に来たんだよ。ついさっき、金魚すくいで遊んできたところなんだ」 「あ! 金魚すくいって、さっきお兄ちゃんが言ってたゲームの事だよね」 「そうだな。じゃあ、この納涼祭でも金魚すくいのお店は出てるわけだ」 「あたし、何回かやってみたけど一匹も取れなくてさー。だから、お店のおじさんにおまけしてもらっちゃったんだ」  里香さんはそう言うと、さっきまで後ろ手に持っていた、金魚が泳ぐビニール袋を俺たちに見せてくれた。  その金魚の泳ぐさまを見たミオは口をぽかんと開けたまま、目をパチクリさせている。 「これが金魚?」 「そだよぉ。ミオちゃん見るの初めて? これって〝デメキン〟っ名前なんだー」 「デメキン……?」  どうやらミオは金魚自体は知っていたようだが、魚体が艶のある黒色で、かつ、飛び出た目玉が特徴的なデメキンを見るのは、これが初めてになるらしい。  そして、デメキンという単語を英語か何かだと判断したのか、ミオがまたしても首をひねって考え込みだしたため、俺はすぐさまフォローに入る事にした。 「ミオ。デメキンってのは、金魚の品種の一つなんだよ。ほら、両目が大きく外に出てるだろ?」 「うん」 「目が出ている金魚。これを短くして出目金、と呼ぶようになったのさ」 「んー? でも、それじゃあ『メデキン』にしなきゃじゃないの?」 「う。ちょっと間違ったかも。じゃあ『目が出ている』、これを逆さまにして『出目』でも意味は通じるだろ」 「そだね。だから出目金なんだ?」 「まぁそういう事だな。要するに目が特徴的だから、そこから品種の名前を付けられたんだよ」

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