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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(21)

「なるほどぉ。さすがミオちゃんのお兄さん。何でも知ってるんですね!」  二人の話を聞いていた里香さんが、尊敬の眼差しで俺を見つめてくる。  この子が俺に対して何でも知っている、という印象を持つ理由は、たぶんミオが、学校でしきりに俺の話をしているからだろう。  まぁ、ほとんどの知識が知り合いからの受け売りかネットで調べたものなんだけど、役に立ったのなら幸いだな。 「ミオちゃんたちは何して遊んでたの?」 「えっとね。さっきお絵描きせんべいで、お兄ちゃんの似顔絵を描いて食べたとこだよー」 「そうなんだ! ミオちゃん、ほんとにお兄さんが大好きなんだね」  里香さんはそう言うと、俺とミオを見比べながら、意味深なニヤけ顔を作った。  俺たちが恋人同士で、結婚の約束までした仲だって事は、他言無用にしているから誰にも知られていないはずだが、ひょっとすると、女性の持つ第六感が何かを察知しているのかねぇ。  あるいは単純に、男同士のイチャついている様に萌えているだけなのか。  正直どっちも考えられるが、とにかく、俺とミオの仲の良さを微笑ましく思ってくれている事に違いはないようだ。 「里香ー、どこにいるの? 早くいらっしゃい」 「あ! ママが呼んでるから行かなくちゃ。それじゃミオちゃん、また後で会えたら一緒に遊ぼうねぇ」 「うん! またねー」 「お兄さんもさようならー!」 「はーい、さようなら。楽しんできてね」  里香さんが、我が子を呼ぶ母親のもとに小走りで駆けて行くのを見届けた後、俺たちは再び金魚すくいの話題に戻る。 「ねぇお兄ちゃん。金魚すくいって言うけど、どうやってすくうの?」 「金魚すくいは『すくい上げる』のが目的だから、専用のポイって道具を使うんだよ」 「ポイ?」 「そう。イメージとしては、丸い手鏡を思い浮かべると分かりやすいかな。で、その鏡部分に半紙みたいな薄紙を貼って、水槽の中に突っ込んで金魚をすくい取るんだ」 「それ、すごく難しそうだね……」  金魚すくいが未経験なミオでも、破れやすい紙を水につけるとどうなるかは容易に想像がつくらしい。その証拠が、今この子がしている、いかにも複雑そうな顔である。

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