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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(23)

 うっかり、ミオの事を女の子に含めた前提で話を進めてしまったが、当の本人は、全く意に介していない様子だった。  もっとも、ミオは俺のお嫁さんになりたいという願望を強く持っているため、嫁ぎ先の俺になら、女の子として扱われるのはむしろ喜ばしいのだろう。たぶん。  そんな事を考えつつ、俺たちは手を繋いだまま人混みを縫うように歩き、コルク弾の発射音と、お客さんの歓声でひときわ賑わっている射的屋へとたどり着いた。 「あー、ちくしょう! また外したぁ」 「ママー、もう弾無くなっちゃった」 「残念だったね坊や。またいつでも挑戦してねぇ」  と、大人から幼稚園生くらいの子供までを接客しているのは、いかにも気風(きっぷ)の良さそうな若いお姉さんだった。  お祭りにふさわしい法被を着て、ショートカットの頭にタオルを巻いたお姉さん。歳はまだ二十代半ば、といったところだろうか。  口紅以外のメイクを極力省いているが、その肌にはハリがある。あと、面倒くさそうな客のいなし方に手慣れている様子から、結構な場数を踏んで来たのだろうという事だけは分かった。  にしても、若い女性一人でこれだけ切り盛りできるんだから、よほど師匠の教えが上手かったんだろうなぁ。 「はい、お兄さんたちいらっしゃい! せっかくだから遊んでいってよ!」  射的屋のお姉さんは俺たちの来店に気付くやいなや、積極的に客引きを始める。  俺らとしても遊ぶつもりでここへやって来たから望むところではあるのだが、肝心なのは、欲しいと思えるような景品がそこにあるのかどうかなんだよなぁ。連れて来ておいて今更な話ではあるんだけれども。 「ミオ、欲しそうなのある?」 「うーん?」  ミオは、大小立ち並ぶ景品の数々を一通り見渡した後、とあるものを指差した。 「あれかなぁ。上の棚に並んでる下敷きなんだけど」 「下敷き?」 「うん。あれって、プリティクッキーに出てくる妖精ちゃんの下敷きなんだよ」  ミオが見つけた淡いピンク色の下敷きには、お菓子の国からやって来たという設定の、妖精ちゃんの笑顔とタイトルロゴが描かれている。  ちなみに、今言った下敷きは狙って取る事はできない。このお店では、下敷きを〝D賞〟として扱い、それに応じた小さな箱を撃ち落として、初めて景品を得る事ができるのだそうだ。

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