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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(32)

 十月にコスプレ、もとい、仮装をするイベントと言えばもうあれしかないのだが、ミオはまだそのイベント自体を知らないらしい。  まぁ、にわかに脚光を浴びるようになったのは、ここ十数年前からの話だし、何より、この子はろくにテレビを見られない環境で育ってきたのだから、流行に疎くなるのもやむ無しだろう。 「ちょっと腹が減ってきたなぁ。どうやら、おせんべいとラムネだけじゃ足りなかったみたいだ」 「晩ご飯、少なめにしてきたもんね。じゃあお兄ちゃん、何か食べに行く?」 「うん、そうしよう。今度は腹いっぱいになるくらい、ボリュームのあるものがいいな」  俺がそう答えるなり、ミオはその場で目を閉じ、鼻をすんすんと鳴らし始めた。  どうやらミオは、その子猫ちゃんばりの嗅覚でもって、おいしいものの在り処を嗅ぎ当てようとしているらしい。 「お兄ちゃんお兄ちゃん。あっちの方から、ソースのすごくいい匂いがするよー」 「ソース?」  ミオが指し示した方角からは、確かに、ソースが焦げたようないい香りが漂ってきている。  この、胃袋を直接刺激してくるかのような誘惑は、おそらく焼きそばによるものだろう。 「ミオ。その匂いは焼きそばだと思うよ。うまそうだから食べに行ってみよっか?」 「うん! そうしようー」  すんなりと話がまとまったので、俺たちは射的による戦利品が詰まった袋と共に、焼きそば屋へと直行する。  するとそこでは、大きな鉄板の上で、ソースを絡めた大量の麺と具材が、ジュウジュウと音を立てて焼かれていた。 「わぁ。すごくたくさん焼いてるんだねー」 「さすがに、これは一人分じゃないよな? 焼き上がったら小分けにして、パックに詰めていくんだと思うけど……」  という話をしながら、お品書きが書いてあるプレートに目をやって分かったのだが、どうやらこの店では、大盛りに並、そしてミニという三つのボリュームに分けて焼きそばを売っているらしい。 「ミオ。ほら、ここに書いてあるよ。たくさん食べたい人のために、大盛りが用意してあるみたいだね」 「そうなんだ。お相撲さんとかが食べるのかな?」 「はは。お相撲さんが来ていれば選びそうではあるけどな。あるいは、ここへ来るまでに飯を食わずに来た人向けじゃないか?」 「なるほどー。このお店の焼きそば、すごくいい匂いがしておいしそうだし、いっぱい食べられそうだもんね。すんすん」

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