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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(38)
「……ほえ? これが釣り針?」
お婆さんから手渡された釣り針、のようなものを手にしたミオは、いかにも不思議そうな顔をする。
無理もない話だな。何しろ、このゲームにおける釣り針というのが、細くて頼りない紙のこよりで結びつけた、W字状のフックだったのだから。
たぶんミオの中では、ごく一般的な魚釣りみたいに、釣り竿と糸、そして返しのついた釣り針のセットを想定していたのだろう。
その想定を大きく覆された状況で、果たしてこの子は、この後どんな反応を示すのだろうか。
「釣り糸が切れるまでは、三個釣り上げるまで遊んで構わないからね。目いっぱい楽しんどくれ」
お婆さんは、釣り糸を持って水槽を覗き込むミオに、ヨーヨー釣りの決まりごとを大まかに伝える。
「釣り糸が切れるなんて事あるの?」
「あら。お嬢ちゃん、この遊びは初めてかい。まぁまぁ、とりあえず、好きなのを選んで釣ってみな」
その言葉だけを聞くと一見優しそうだが、お婆さんが一瞬だけミオの死角で見せた、しめしめという小狡 い顔を俺は見逃さなかった。
ミオのヨーヨー釣りが初めてだと知った途端、お婆さんは大方、カモがネギ背負 ってやって来たとでも思ったのだろう。
何しろ、遊び慣れしていない子がヨーヨー釣りを遊ぶと、水に浸されたこよりがプツンと切れて失敗し、釣り針を何度も買い直す事になるからな。
そりゃお店も商売だから仕方ないけどさ、何だかなぁ。ミオが挑戦するのは初めてだと分かったんなら、せめて遊び方や注意点なんかを、もう少し詳しく教えてくれても良さそうなもんなのに。
「うーん……」
案の定、ミオの表情からは「そう言われてもなぁ」といった困惑の色がにじみ出ている。
どうやら、自分がお嬢ちゃんと呼ばれた事だけは、すでに右の耳から左の耳へと通り抜けてしまったらしい。
釣り上げに失敗する事自体はさしたる問題ではないのだが、情報が少なすぎて、何だか分からないうちにゲームが終わってしまうと、後にまでモヤモヤを引きずるおそれがある。
ならばこういう場合は、俺があらかじめアドバイスを送って、知識をつけた上で臨ませるのがいいよな。
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