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41.ショタっ娘のお祭りデビュー(46)

 一体何だろう。俺がミオの養育里親になった理由か、あるいは、俺たちに結婚する予定があるのかを聞いてみたいのだろうか。  まさかな。俺たちの甘い恋人関係は、ミオにはくれぐれも口外しないよう釘をさしてあるから、おそらく後者だけは無いと思うのだが。 「……その。ミオちゃんとは、お風呂には一緒に入っていらっしゃるんですか?」 「え!? えっと。僕が残業で遅くなった日は先に入らせてますけど、それ以外はまぁ一緒ですね」  怜香さんの質問の意図が分からぬまま、うっかり正直に答えてしまったが、ここで嘘をついて仕方ないよなぁ。  その場しのぎで適当に答えても、ミオの〝好き好きセンサー〟が反応して、即座に訂正が入るのは火を見るより明らかだし、そもそも、別に俺たちはやましい事をしているわけでもないし、隠す必要はないだろう。 「やっぱり、柚月さんのお宅でもそうなんですね。羨ましい限りですわ」 「はい? 羨ましい、ですか?」 「ええ。里香はこのごろ、私とも主人とも、一緒に入りたがらないものですから、寂しくなってしまって」  なるほど。「羨ましい」という言葉には、そういう背景があったのか。  愛娘に対する母親の気持ちはよく分かるんだけど、あえて里香さんの立場になって考えてみると、小っ恥ずかしくなってきたんじゃないのかなぁ。  俺には娘がいないから想像で推測しているんだけど、たぶんそういう理由だと思う。  こればっかりは家庭によって千差万別あるだろうから、あまり首を突っ込み過ぎないほうがいいよな。  という事で、怜香さんには申し訳ないが、ここは無難に茶を濁しておこう。 「まぁあれですね。いろいろあると思いますけど、俺……じゃなくて僕とミオの場合は、湯船の適温がちょうど同じだったのもあるかと」 「まぁ、湯船の温度!? そこには気が付きませんでしたわ!」  俺の当たり障りのない返事を聞いた怜香さんは、まるで天啓を得たかのように表情が明るくなり、キラキラと目を輝かせ始めた。  まずい! ひょっとして俺は、茶を濁すどころか、余計な事を口走ってしまったんじゃないのか。  これを機に怜香さんが、湯船の水温を里香さんの適温に合わせようと躍起になったところで、何ら問題は解決しないような気がする。  だって、里香さんが両親と一緒に入りたがらない理由は、たぶんそこじゃないだろうから。

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