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42.田舎に帰ろう!(2)

「お前もデパートで初対面して分かったと思うけど、ミオは結構人見知りするんだよ。まぁ、それには理由があるんだけどさ」 「……その理由にはあえて触れんといておくけど、言うて、お相手は柚月の両親やろ。さすがに初日はギクシャクするかも分からんけど、一日一緒に過ごせばさすがに慣れるんちゃうか?」 「だといいんだけどな」  親身になって相談に乗ってくれる佐藤の心遣いは嬉しいんだが、俺の悩み事はそれだけじゃない。  俺とミオは、純粋な養育里親と引き取られた子供の関係を超えて、恋人同士にまで発展しているのだ。  それだけならまだしも、いくらその場の成り行きだとは言え、俺は将来、ミオと結婚する約束まで交わしてしまったのである。  その事実を踏まえた上で俺が最も心配しているのは、もちろん、ミオが口を滑らせて、親父とお袋に結婚の話をしてしまわないか、という事。  ミオには「うちの親に結婚の話をするのは、まだ時期が早いから」と口酸っぱく言い聞かせているのだが、もし万が一の事があったら、即刻家族会議になることは容易に想像がつく。  俺が養育里親の立場を悪用して、ショタっ娘のミオを我が物にしようと画策していたなんて思われたら、勘当どころの話では済まなくなるのだ。  もっとも、お利口さんなミオの事だから、何をどうしたら最悪の事態が起こるかは、本人もよく理解しているだろう。  ただ、あの子は天然なところがあるからなぁ。そこがかわいいんだけど、状況が状況だけに、うっかりミスだけは何とか避けて欲しいと思うのである。 「なあ柚月よ、あんまり考えすぎてもしゃあないで。物事なんて、所詮なるようにしかならんのやさけぇ」 「うん……そうなんだけど」  佐藤は確か大阪出身だったと記憶しているんだが、たまに播州弁(ばんしゅうべん)のような訛りが混じっている気がするんだよな。  ひょっとすると、佐藤のご両親がそっち方面の出身だったりするのだろうか。 「何や、空返事やのう。そんなに心配なら、お前がご両親とミオちゃんとの潤滑剤になってやるしかないやろ」 「潤滑剤?」 「せや。ご両親とミオちゃんの双方をよく知っとるお前やからこそ、その役目が務まるんやで。それをよう覚えとき」

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