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42.田舎に帰ろう!(3)
なるほど、潤滑剤か。
出会ったばかりでぎこちない双方の間に俺が入って、コミュニケーションを円滑化させる。それなら何とか務まりそうだ。
結婚の約束をしている話が漏れるのも食い止められそうだし、さみしがりやのミオのためにも、帰省中は常に、側にいた方がいいだろうな。
「ありがとう、佐藤。おかげで少しは気が晴れたよ」
「さよけ。まぁ親子水入らずって事で、ゆっくり羽を伸ばしてくればええやろ」
「そうだな、そうするよ。ところで佐藤」
「ん? 何や?」
「お前の帰省中はどうするんだ?」
「どうするって、何を――」
「そりゃ女の子の事だよ。お前こないだデパートで服選びしてた時、新しい彼女ができそうみたいな話してたろ」
「あぁ、その事かいな」
佐藤は俺の話を聞くや、何か悟りでも開いたかのような顔で両手を広げ、首を左右に振った。
「『その事かいな』ってお前、やっぱりフラれたのか。せっかく一張羅まで用意したのにな」
「やっぱりって何やねん! 話を最後まで聞けや。アミちゃんとは、まだ付き合うまで進んでへんのや」
「え。そうなんだ」
「うむ、なかなかにガードの固い子やよってな。一度飯食いに行った後、連絡先を交換して、今はちょいちょい話す程度に留まっとる」
「脈はあるのか?」
「分からへん……。メッセージの返事が来るっちゅう事は、少なくとも、オレを嫌ってはおらんと思うんやけどな」
「でも、なかなか会うまでは進展しないって事?」
「せや。たった一度の飯の時は、高級イタリア料理店に連れて行ったんやけど、ひょっとして、好みが合わんかったんかなぁ」
その場で腕を組み、斜め上を見ながら、何がまずかったのか分からないという様子の佐藤を見るに、こいつからは、またやらかしそうな匂いがプンプンしてくる。
そりゃ一緒に食事に行くのは、男女のお付き合いとして普通にやる事だけど、だからと言って、初デートでいきなり高級イタリアンに招待するかねぇ。
社長か富豪じゃあるまいし。
こんなお金のかけ方してたら、またリゾートホテルで十万円かけた時のユキちゃんみたいに、「重い」って言われて早晩フラれそうな気がする。
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